むかしの入場券は時間制限がなかったので、1日中使えました(あるいは終電まで)。JRになってから、主にキセル乗車防止のために時間制限の入場券が登場してきました。
JRで時間制限があるのは北海道、東日本、東海、西日本の全駅と、小倉および博多です。小倉と博多は新幹線がJR西日本なので、それにあわせていますね。もちろん博多南はJR西日本なので、2時間制限がかかります。
まずは、実物から見ていきましょう。
今年廃止になった日高本線の静内駅です。このように発売時刻と2時間以内という注意文言が入ります。
ちなみに、この当時はバス代行であって列車は来なかったのですが、鉄道の駅であることは間違いなく、実際に構内に入るには入場券が必要でした。構内の風景は下記参照。
同時に買った記念入場券です。これもれっきとした入場券であり、有価証券です。実使用ももちろん可能です。
こちらは時間制限規定がはいっていません。
ここで、疑問に思うでしょう。マルスや自動券売機で入場券を購入した場合は2時間制限で、記念入場券の場合は2時間制限がかからないのか。
こういうKYなツッコミをしてしまうのが本ブログのウリです。
そこでJRの営業規則を参照してみます。
(入場券の発売)
第294条
次の各号に掲げる者が、乗車以外の目的で乗降場に入場しようとする場合は、入場券を購入し、これを所持しなければならない。この場合、入場者の年齢別の区分については、第73条第1項の規定を準用する。
(1)大人
(2)小児(大人及び小児が、2人を超える幼児を随伴するときは、その超える幼児については、小児とみなす。)
2 入場券は、駅において、係員又は乗車券類発売機により発売する。この場合、入場券の使用時間を制限して発売することがある。
3 前項後段の規定により入場券の使用時間を制限する場合は、券面に発売時刻及び使用時間を制限する旨を表示して発売する。
4 定期入場券は、別に定める駅において特に必要と認められる場合に限って発売する。
5 入場券は、入場する日の当日に発売する。
「入場券の使用時間を制限する場合は、券面に発売時刻及び使用時間を制限する旨を表示して発売する。」とありますね。ということは、記念入場券の場合は、わざと時間制限をしていないと読めます。いちおうJR北海道の企画担当者は、このあたりも精査してから原稿を作成していると思います。静内駅とかなら、車で訪れて、ちょっと構内を見たくなって、せっかくなら記念入場券を使って入ろうと思う人は普通にいるでしょうからね。
なので、記念入場券をつかって入れば、2時間以上構内にいることが可能になります。弁当を食べたとしても、静内駅で2時間もなにすんだという話ですが。。。
Youtuber向けに燃料を投下するとしたら、「北の大地の入場券で2時間以上構内を散歩してみた」とかですかね。一人は券売機の入場券で入って、もう一人は北の大地の入場券で入って、2時間後に、俺だけ追加料金とられたよ~(泣)みたいなw。
俺はやらんけど。
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さて、常備券の場合はどうなのか。手書きになります。
上がJR東海の事例、下がJR東日本の事例です。東日本の方は文言が入りきらないとみてA型になっていますね。
これは入場券が軟券化したときの入場券ですが、ミスって時間を入れる箇所が抜けていたので、ゴム印で押されています。
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なお、入場から2時間としている会社もあります。
こちらの方が合理的ですが、JRの場合は手売りの入場券もあったので、改札時に時刻を記入するという手間もあり、発売からとしたのでしょう。
(阪急電鉄旅客営業規則)
【入場券の効力】
第 127 条 入場券は、発売駅で発売当日中に、制限された使用時間(以下「制限使用時間」という)内で、1 枚につき 1 人 1 回に限って使用することができる。
2 前項の制限使用時間とは、改札機で改札を受けて入場する際に券面に印字される時刻より2 時間とする。
3 入場券所持者は、列車に立ち入ることができない。
営業規則にもきちんと明記されていました。
ちなみに、梅田の「田」が変な理由は下記。
こちらは同じ入場後ですが1時間です。
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本ブログはここで終わりません。
2時間過ぎてしまった場合はどうなるのか?
田舎の駅ではあまりないと思いますが、駅ナカが充実していたら意外にあると思います。友達を迎えに行って、改札内の食堂でメシ食ったら2時間いつのまにかたってしまっていたとか。しかも、JRの場合は買ってから2時間ですからね。
昔の上諏訪駅は温泉がありましたから、のんびりしていたら2時間近く行ってしまうかもしれません(現在は足湯になっている)。
飯田線の中部天竜駅は佐久間レールパークが併設されていて、入場券で入る仕組みだったので、こちらも2時間以上いてしまう可能性がありました。
こんな感じで追加料金を取られます。いまは端末でレシート様のものを出す駅もあるようですが、諸料金切符が用いられる駅もあります。百歩譲って、入場券を特補で出すことはあり得るとしても(下記参照)、超過料金は乗り越しの精算金のようなものですから特補で出すにも無理があるし、運賃とは違うので、乗り越し精算に入れるわけにもいかないからでしょう。
ちなみに収集家の故・近藤喜代太郎氏は、この諸料金切符がほしくて、ある駅で相談したら、駅のガラスを割ったら出してもらえるよって笑われたらしいですね。確かに踏切の遮断棒を折って弁償した場合は、諸料金切符が発行されたはずです。むかし改札に遮断棒の単価表があったのを憶えています。
しかし、近藤氏の執念はさすがだと思うのですが、団体で駅にバスを乗り付けて駅のトイレを使うと、このキップが発行されることを知って、勇んで購入したようです。たぶん教授なので、ゼミ旅行あたりで無理やり駅にバスを乗り付けたのだと思います。
(近藤喜代太郎『国鉄きっぷ全ガイド』325頁より)
著者とは何回か手紙のやりとりをしたのですが、シンパシーを感じましたw。
氏が存命なら、喜んで駅に2時間以上いたでしょうね。