鉄道人気による「にわか撮り鉄」や一般の撮影者まで加わって以前にも増してホーム上の危険度は増加しています。特に一部の社会性のない悪質撮り鉄は、行動が読めない部分があるので、非常に危険です。自分の趣味だけに没頭していて、他人への配慮がない人たちです。
撮影位置が悪いと急に見境なく走り出すし、フレームに誰か入って来たら怒号を飛ばすし、鉄ヲタの私でも避けてしまいます。そもそも人だかりが嫌いなので、行きませんけどね。
今回の八王子駅での転落事故を見ると、そろそろ本格的に撮り鉄をターゲットにした雑踏整理指針を策定しないと、事故が起きたときに業務上過失致傷罪などに問われるリスクも出てくるでしょう。刑罰は受けないにしても、書類送検ぐらいにはなる可能性は捨てきれないですし、駅長や助役などが個人的に不法行為責任を負うリスクも出てきます。もちろん使用者責任として会社に請求した方が実効性があるので、個人への請求は少ないですが、社内で懲戒処分になったりなど出世や給与に響くかもしれません。それ以上に、人が怪我をしたり死亡したりすれば、心情的にも堪えられないと思います。
この手の事案で記憶にあるのが、明石花火大会歩道橋事故です。ずさんな警備計画で歩道橋で多数の人が滞留し将棋倒しが起きた事件です。歩道橋がびくともしないのが、さすが日本の建築物なんですがね。
鉄道のイベントでの死亡事故の代表例といえば京阪100年号事故ですね。このようなイベントなどでかなりの雑踏が予測されるにもかかわらず、対策が不十分であった場合、管理者の注意義務違反となり民事責任のみならず刑事責任をも負う可能性が出てきます。
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では、事案に分けて、私なりの対策を述べていきます。
1 駅構内でかなりの雑踏が予測される場合
イベント列車や廃止の最終列車の場合で、かなりの雑踏が予測される場合は、入場規制をするべきです。事故や災害によって、多数の乗客がいる場合には入場規制をするのに、なぜイベントの場合に入場規制をしないのか疑問です。確かに祭りごとで入場規制するのは水を差すようで気が引けるのかもしれませんが、初詣でもやっているじゃないですか。
同じような入場規制をすればいいだけです。
よくイベント列車の前に撮影者が鈴なりになっていると思うんですが、あれって誰かがバランスを崩したら、押されて線路に転落するリスクがありますよね。
おおむね3段階の規制方法を考えてみました。
【フェーズ1】:通常規制
平常時から禁止する事項。
● ホームでの脚立の使用は禁止。
● ホームでの三脚は許可された場合を除いて禁止。
● 運転業務従事者(運転士・車掌・ホーム監視者など)へのフラッシュの禁止。
● 黄色の点字ブロックよりはみ出ないこと。
● 自撮棒の使用禁止。
● ガンマイクの使用禁止。
【フェーズ2】:予告規制
事前に混雑が予測される日は予告したうえで加重した規制を行う。
● 必要に応じて入場券の発売停止。
※事前に枚数を限定した入場券を販売する方法もある。
● 整理券を配布して入場者の限定。
※無人駅などの場合。
● 乗車予定列車と関係ないホームへの入場制限。
※階段に係員を配置して規制する。
● 刑事事案に発展する可能性を考慮して警察官の派遣を要請。
● 人が集まりやすい先頭車両付近は規制線をはって立ち入り禁止にする。
あるいは立ち入り人数と立ち入り時間を限定して、順番に入れさせる。
● 許可された者以外は撮影禁止とする。
※事実上、報道機関等に限定して許可する。
● イカツイ駅員を配置する。
※ギャグみたいでけど、効果ありますよ(実証済み。)。
【フェーズ3】:緊急規制
想定外の雑踏などの場合、駅長の判断において即時、規制を実施する。
● 入場券の発売を停止する。
● 入場券の発売を停止したうえで、ホーム上の乗客の検札を行い、乗車と関係ない乗客をホームから排除する。
● 侮辱罪、暴行罪、脅迫罪、威力業務妨害罪などの犯罪に該当する事案があれば積極的に検挙する。場合によっては逮捕し、警察官に引き渡す。
※暴れるならもう逮捕するしかありません。そのうえで損害賠償請求をして、その旨を公表すると、アナウンスメント効果があります(氏名の公表まではしない)。
※ある程度、加害者の行為態様に応じた対応(手段の相当性)が必要とされるので、助役や主任などの現場指揮者への研修が必要ですね。
● 迷惑行為をした者から誓約書をとる。「以後、貴社の構内において撮影行為はいっさいいたしません」とか。
● さらに迷惑行為をした者をリスト化して社内で共有する。
※悪質な者は顔写真も保存していいと思います(もちろん非公表)。
といった感じでしょうか。基本的には人権派なので、公共性のある施設での規制は緩やかにするべきと考えますが、人命にも関わりますので、悲惨な事故が起きてからでは遅いと思います。
2 怒号対策
注意して効果がないのであれば犯罪として検挙するしかないですよね。
これに一番適合するのは、軽犯罪法です。
第一条 左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。
(中略)
五 公共の会堂、劇場、飲食店、ダンスホールその他公共の娯楽場において、入場者に対して、又は汽車、電車、乗合自動車、船舶、飛行機その他公共の乗物の中で乗客に対して著しく粗野又は乱暴な言動で迷惑をかけた者
(中略)
十三 公共の場所において多数の人に対して著しく粗野若しくは乱暴な言動で迷惑をかけ、又は威勢を示して汽車、電車、乗合自動車、船舶その他の公共の乗物、演劇その他の催し若しくは割当物資の配給を待ち、若しくはこれらの乗物若しくは催しの切符を買い、若しくは割当物資の配給に関する証票を得るため待つている公衆の列に割り込み、若しくはその列を乱した者
第三条 第一条の罪を教唆し、又は幇助した者は、正犯に準ずる。
5号の場合は、「乗物の中」と限定条件があるので、駅での行為は入ってきませんが、13号は「公共の場所」なので、駅も含まれてきます。「又は」がついているので、「又は」の前でいったん要件が切れます。赤字の部分だけ読んでください。
これを根拠にして、あまりにひどい場合は、現行犯逮捕してしまえばいいのです。あるいは現行犯逮捕をちらつかせて警告するのです。一部の悪質な撮り鉄はクレームを入れるのでしょうけど、そのようなカスハラは無視でいいでしょう。
国鉄時代の鉄道公安職員のような権限はないですが、駅員でも私人として逮捕は可能ですので、警察官がくるまで身柄を実力で確保すればいいのです。ただ、軽微な場合は、「住居若しくは氏名が明らかでない場合」か、「逃亡するおそれがある場合」という条件が要求されます。
3 沿線対策
これは難しいですよね。
その場に鉄道関係者や警察官がいなければ対処できないですし、そこまで人件費をかけるわけにもいかないですよね。
逆転の発想で軽減できませんかね。
有料撮影会を積極的に実施すればいいのではないでしょうか。
これまでの鉄道会社の発想だと、一般受けするような派手な列車の場合はイベントに登場させて撮影会を行ったと思います。そうではなく、マニア受けするような撮影会をこまめに開くのです。
クラブツーリズムが、あまりにもマニアすぎるツアーを企画していますが、満員御礼ですよね。それだけ需要があるということなので、金儲けをしつつ、安全対策にもなります。
たとえば、下記のようなDD16の撮影会などです。
むかしはDD16なんて、かなりコアな撮り鉄しか興味を持ちませんでしたからね。 こういった玄人受けするイベントを開くことで、撮り鉄さんの心も満たされると思います。要するに地下アイドルの撮影会みたいなものでしょう。
ドクターイエローなんて、今では子供たちや女性の一番大好きな新幹線になっていますけど、0系時代は保守車両マニアだけが愛でていただけですから。
そのうえで、甲種輸送(貨物扱いの車両輸送)はシートで覆ってしまい、廃車回送は落書きしてしまえば撮影者は減ると思います。
SLなどの場合は仕方がないので、沿線駅などに警備員などを派遣するしかないでしょう。イベント列車なので、それ相応の警備費用は織り込むしかないと思います。
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私が懸念するのは、鉄道会社全般が一律に撮影禁止などといった方向になることです。この手の物は段階を踏むべきなのですが、事実上、良質な撮り鉄と悪質な撮り鉄を分けることが困難なので、一律禁止の方向に流れてしまわないかです。
そこでちょっと無い知恵を絞ってみたわけです。
でも、なんで鉄道好きってこんなに増えたのだろうか。。。
むかしは学年に1人ぐらいしか鉄道好きっていなくて、基本的に根暗な趣味だったんですけどね。。。