むかしは連絡船がJR直営だったので、「継続乗車船」といいました。今は宮島航路が子会社に移管しているので、「継続乗車」という名称になっています。
この制度、有効期間が切れても、着駅まで行っていいよというありがたい制度です。一見イレギュラー対応のように思えますが、この制度を自然と利用している人は毎日何千人もいると思います。
まずは条文です。
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第155条 (継続乗車)
入場後に有効期間を経過した当該使用乗車券は、途中下車をしないでそのまま旅行を継続する場合に限って、その券面に表示された着駅までは、第147条の規定にかかわらず、これを使用することができる。この場合、接続駅において設備又は時間の関係上、旅客を一時出場させて、列車に接続のため待合せをさせるときは、指定した列車に乗り継ぐ場合に限り、継続乗車しているものとみなす。
※147条は、重要なところだけ抜きだすと「乗車券類は、その券面表示事項に従って1回に限り使用することができる。」です。
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種明かしをすると、午前様方はたいていこの制度の恩恵を受けています。乗車券を例にすると、当日限り有効の乗車券で24時前に購入した乗車券が24時で切れてしまっては困りますよね。なので、24時以降も「途中下車をしないでそのまま旅行を継続する場合に限って、その券面に表示された着駅までは、第147条の規定にかかわらず、これを使用することができる」わけです。
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あれは、24時を過ぎたところで普段と同様に継続乗車に突入し、そのまま元旦をこなして、更に2日に入っても継続乗車が続いて、(元旦の)終電を迎えてジ・エンドなのです。
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さらに、気になる方がいると思います。「接続駅において設備又は時間の関係上、旅客を一時出場させて、列車に接続のため待合せをさせるときは、指定した列車に乗り継ぐ場合に限り、継続乗車しているものとみなす。」と書いてある点です。これは着駅に着く前に終電を迎えてしまった場合に、いったん出場し、翌日の列車等で更に向かう場合の規定です。駅を閉めないといけないので、構内に客を残すわけにはいきませんからね。
万が一、有効期間がヤバくなった場合は緊急措置として使えますので、覚えておいて損はないと思います。例えば、東京から大阪に往復して、帰りに名古屋で途中下車をした際に有効期間が切れてしまった場合などですね。有効期間内に駅に行けば間に合いますので、申告してください。無人駅の場合は車掌か運転士(ワンマンの場合)に申告しましょう。
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そうすると、疑問が湧くと思います。1月1日終電後、あるいは大みそか以外でも継続乗車制度で大回り乗車は引き続き出来ないのか?結論としては出来ませんが、論理的にはちょっと複雑です。大回り乗車中に終電を迎えてしまった場合の選択肢は三つです。
① その駅で下車し前途無効とする。
⇒終電が終わった駅なら、経路上の途中放棄として認められると思いますが(それでも迷惑な話です。)、終電前だと、申告内容に合理性がないため(不正乗車の疑いあり)、難しいと思います。旅客の側でやむを得ず下車をする合理的な理由を証明をする必要があると考えます。難しい場合は②での処理をされるでしょう。
② 乗り越し精算をする。
⇒これが一番普通の対応です。ただし、大都市近郊区間内のため、発駅の最短経路の運賃から既に支払い済みの原券分が控除されるだけなので、さほどの負担ではないでしょう。ここまで通ってきた迂回ルートは計算上、関係ありません。
③ 引き続き目的地をめざし継続乗車を申告する。
⇒大回り乗車であっても、普通の乗車券ですので、更に継続乗車制度の利用は可能です(JRに確認済み。)。しかし、その先が続きません。例えば北小金から下図のようなルートで大回り乗車を開始して、南越谷で終電になったとします。
このとき、南越谷駅で継続乗車を申告した場合は、基程141条に基づき「着駅に早達する列車」を指定することになります。その際は、下記のようなスタンプが押されます。南越谷駅で目的地が馬橋駅と申告したら、房総半島をまわるような列車を指定してくれるわけがありません。普通に新松戸乗換となり、上図の黄色の駅は通ることは許されませんので、大回り乗車の作戦はついえるわけです。
なので、結論としては、終電後の大回り乗車であっても、継続乗車制度によって最終目的地に達することは可能であるが、いったん出場後の継続乗車中は最短経路に縮減されるということになります。さすがにJRに迷惑になるので、実践はしないでくださいね。
※大回り乗車で継続乗車を申告して出場し、そのまま逃げた場合は詐欺利得罪を問われる可能性があります。