なかなかモヤモヤする話ですよね。昔は車内で買っても同じ金額なので、こんな問題はなかったんですよ。

ということで、考察に入ります。
とりあえず、下記の事例から、保守作業、締切り、故障については事前購入料金で可能なことは判明しています。鉄道会社側の理由で、予告もなく旅客の購入機会を奪っているので、過失ありと考えて、当たり前の話ですね。
特急券じゃなくてグリーン券だけど、車内精算で事前料金の適用を受けた経験はあります(グリーン券売機故障のため…)
— れふぱん (@KEI0andSu27) 2025年7月28日
窓口行ったら発券とかされるのかなと思ったら、こういう対応になった pic.twitter.com/d9rKfo89Oa
【券売機混雑の場合】
問題は、券売機が混雑していて買えなかった場合です。JRにも旅客にも責任がないのに、車内料金となるのか。旅規を眺めても何も出てきません。
全車指定席なのにMV1台のみで先客がオペレーター接続していたら誰も特急券買えないクソ仕様。
— 同報みぢてつ△ 【みぢ鉄】 (@miditetu_JR) 2025年7月26日
わかしおに自由席を連結して安房鴨川の窓口を復活させろ pic.twitter.com/l2n99I5WKC
この掲示から30分前から大変混雑するという情報はわかりましたと。
で、30分前にきて、混雑で購入できなかった場合は、とりあえず乗って車内で購入するわけですが、車内料金になるのでしょうか。自分は悪くないのに高い金額を払わないといけないのでしょうか。といって、JRも悪くない(?)ようなので困ってしまいます。
もちろん事情気の毒と判断し、車掌の裁量で事前料金で売ることもできると思いますが、客の側から権利として事前料金での精算が要求できるのかです。
これは、従来の慣行から判断するしかありません。鉄道旅客運送は商行為であり、商法が適用されるのですが、そこには「商事に関し、この法律に定めがない事項については商慣習に従い」(商法1条2項)とあります。
国鉄時代から駅の窓口が混雑していて購入できない場合は、乗車駅証明書を発行して車内で購入する運用をしており、多くの駅で定着しています(例外も増えてきています。)。ここに一つの商慣習ができあがっていると理解できます。乗車駅証明書は不正乗車ではないということを証明する意味を持っており、複雑なきっぷで発券のいとまがないときや窓口混雑などで発行されてきたものですから、事前料金で購入するいとまがない場合にも適用できると考えられます。
また、消費者契約法10条の観点から、合理的に考えてきっぷが購入できるような時間的余裕をもって来駅したにもかかわらず、予期しない混雑で事前に購入できなかった客から車内料金を徴収することは本条に反し、当該規定は無効と解することも可能です。
なので、券売機が混雑していて事前に購入できなかった場合は、事前料金を適用せよと要求できると考えます。ただし、合理的な時間までに駅に来ていた場合に限りますし、事情の証明責任は旅客側にあると言えるでしょう。
なお、この合理的な時間は、駅の構造によって変わってきます。少なくとも、上記の掲示から考えて、30分前に来ているのに券売機が混雑して購入できなかった場合は、確実に事前料金での精算になるでしょう。
沼津ではグリーン券の券売機がないので、事前に買おうとすると改札外のみどりの窓口に行かなきゃならないけども、窓口が混んでいて発車時刻が迫っている場合こんな紙をもらえます。これさえ渡せば車内精算でも事前料金が適用されるようで pic.twitter.com/fJjM16GmQB
— わつを (@watsuwo0915) 2016年11月26日
【ネットで買えよという反論について】
ネットで買えばいいのではないか?という反論がありえますが、すこし論点が違うと思います。窓口と券売機と並行してネットでの購入方法を提示しているのはわかりますが、比較するのはそこではありません。券売機で買えた人と買えなかった人との平等な対応をいかにとるかという公平性の問題です。窓口や券売機というインターフェイスを用意していながら、旅客に過失がないにも関わらず不公平な取り扱いは信義則上、許されないでしょう。
もともと旅客は券売機で購入できるという期待の下、駅に来ているわけですから、比較対象は窓口か券売機となります。それは、旅規4条の「現金をもって、所定の運賃・料金を提供するものとする」との文言から、現金での支払いができることが最低限保証されることなっています。また、公益性の観点から、スマホを持っていない小児や高齢者なども視野に入れると、ネットで買えよという反論は無理があることがわかるでしょう。
【返金を受けられるのか】
では、やむをえず車内料金を支払ってしまった場合に返還請求することができるのか。適用されるのは下記の条文です。
(不当利得の返還義務)
第703条 法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。
各要件を検討します。
●損失
事前料金と車内料金の差額です。
●利得
同上。
●損失と利得の因果関係
やむを得ず車内料金を支払うこととなったので、その因果関係があります。
●法律上の原因がないこと
前記の通りです。
したがって、支払ってしまった場合、旅客はJRに差額を請求できると考えます。