旅と鉄道の美学

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【営業規則系】 引換乗車券とは何なのか(途中下車印多数の場合)

 このたび、東京に行く用事があったので、気になっていた新金谷から東京都区内の乗車券を購入することにしました。さらに、そのまま新幹線に乗って、いつものように新横浜で降りて手に入れるというのも面白くない。

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 そこで、小中学生時代の追体験をすべく硬券で途中下車の旅をしてみようと思ったわけです。出だしの鋏痕もいいですね。小学生の時に乗車券を買ったドキドキ感が思い出されます。当時、複雑な経路は補充券になりますが、常備券や準常備券の設置されている区間をわざと購入して、途中下車の旅をよくしていました。もちろん青春18きっぷも使用していましたが、たまには趣向をかえてこういったこともやっていたわけです。

 ちょうど下車して駅舎の写真とスタンプも入手しようと思っていたので、一石三鳥です。昔ならこれに硬券入場券の購入が加わっていました。

 

 そう考えていたら、宮脇俊三氏の『最長片道きっぷの旅』の一文を思い出しました。途中下車印がいっぱいになったあたりで、駅員さんから、回収されて発行替えになるよといったような趣旨で言われたことです。宮脇氏は回収されてはたまらないと適当にあしらったようなことが書いてありました。今でこそ、経由が別紙となっていますが、当時は規則上、表に経由を書ききれない場合は裏面なので、途中下車印を押すスペースが事実上、表しかなかったのです。

 まだこの引換の制度は生きているのだろうか。。。どうせ券面が下車印まみれになるのであれば、相談してみようと思い立ったわけです。原券は回収されても、現在の制度が現場でどのように処理されているのか実態を見極めたくなりました。

 

 そうはいっても、こんな面倒ごとを頼むのも申し訳ないので、手早く情報検索できるように資料一式を携えて向かいました。たまに面倒な乗車券などを頼むときはあるのですが、できるだけ資料を持参するようにしています。そうすると、それをヒントに本社や支社に照会するので、返答が早くなります。大きな駅の主任さんとか古参の駅員さんにあたると、逆に難しいことに挑んでやるぞみたいな妙な戦意を感じて、頼もしく感じます。駅員時代の自分もそんな感じです。駅員さんも打ち勝った満足顔でお別れです。まあ、私の変な趣味に付き合わせて申し訳ないという気持ちはもちろんあるので丁重にお願いし、きちんとお礼をしています。

 

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 では、原券の状態から。

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 原則は表面から途中下車印を押す決まりです(基準規程144条1項)。今回の場合、東田子の浦、吉原、清水は発行日という重要な情報の上に乗っており、ちょっとまずいですね。どうせ回収されると思って、全部お任せで押してもらっていました。

 

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 表面が一杯になったところで裏面に移ります(基準規程144条4項本文)。そして、裏もいっぱいになったところで引換になります(同但書)。

 ということで、藤沢まで来たところで、次の大船は大きな駅だし、ちょっと相談してみるかと思い、改札で声を掛けました。

 若い駅員さんに乗車券をみせて、下車印でいっぱいなので、そろそろ補充券で引換対象ですよね。。。と切り出してみたものの、理解されなかったようでした。その後、少し離れたところにいた主任さんらしき人が割って入ってきて、補充券となるとお時間をいただきますが、よろしいですか?と、想定内の返事。それに備えて昼飯をここまで食わずに旅しています。当該主任さんに、制度の概要とこちらの考えている記載方法を一通り説明し、資料をお渡して、改札を離れました。

 知り合いのJRの方に確認すると、自動改札機の中でぐちゃぐちゃになったきっぷを補充券で書き換えて引換として渡すことはよくあるようなので、引換制度自体は一定程度認知されているようです。

 

 そして昼飯後に受け取った補充券がこちら。

 結局、大船で満足してどっと疲れが出てしまったので、その先は川崎で降りて終わりです。

 

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 さて、営業規則を研究するブログでもあるので、この制度を掘り下げていきましょう。

 そもそも「引換」とはどういった制度なのか。この名称でわかる通り乗車券類の引換です。証拠証券たる紙片の証明力が弱くなったので、この先で支障がないように別の物に書き写すわけです。区間変更などのように契約条件が変わるわけではなく、すべて同じ条件で紙片だけが変更になる制度です。したがって原券の内容をそのまま書き写すのが基本です。

 そう考えるといくつか疑問が出てきます。

 

(1)片道に〇は不要だと思います。原券欄の種別でわかりますし、片道乗車券を改めて作り出すわけではないので、理論上、変です。多くの書式集でもこれは省かれています。

(2)上記の通り契約条件の変更はありませんので、収受又は変更区間欄は抹線を引くわけです。金額欄も含めて改ざんリスクを防止するのです。それ以外の空欄個所の抹線はあってもなくても良いと思います。

(3)記事欄の記載内容は「多数下車」「最近下車駅 大船」に分かれます。多数下車が理由部分で、汚損の場合は「汚損」と書かれます。また、これまでの途中下車駅がリセットされては支障があるので、最近の下車駅を記入する必要があります。今回、私は大船駅の改札をでて昼飯を食ってきているので、最近下車駅は大船になります。改札内で待って処理してもらうなら、途中下車印を手繰っていって一番直近の駅を記載します。引換券の発行処理時間のため改札を出ていることから、駅の承認があれば一時出場と考える余地ももちろんありますから、かなり遠方の駅が直近で降りた駅だった場合は一時出場を積極的に認めてあげた方が運用上は好ましいですね。ちなみに、最後の途中下車駅は運行不能などで引き返した場合(無賃送還:事故変)に最終途中下車駅を基準にして払い戻し処理がなされるので、重要な情報となります。

(4)これは私見ですが、3日間有効は良いとしても、記事欄に補足があった方が丁寧だと感じました。引換の発行日から3日と誤解されるリスクもあるので、例えば「8/9まで有効」と記入するなどですね(基準規程235条7号イ類推適用)。「有効期間が長期にわたるものは、必要に応じ、『何月何日まで』の例により記入することができる」とするもので、この場合にも応用すべきです。

 書式集によっては、有効期間欄にそのまま「8/9まで」と記入するような見本もあるようです。

 

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 【謝辞】

 大船駅改札の皆様へ。面倒なことを持ち込んで申し訳ありませんでした。ありがとうございました。

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