旅と鉄道の美学

鉄道を中心とした国内外の旅と切符など。リンクフリーです。

【コラム】 きっぷの画像をアップする際にどこまで注意すべきか

 ネット上にきっぷの画像をアップする場合に気になると思いますので、整理しておきます。内容は十分精査しておりますが、万が一、指摘事項があればお願いします。

 

 1 紙幣の場合

 まずは一番参考になる紙幣と比較してみます。こちらは非常に厳格に取り扱われています。

  (1)通貨及証券模造取締法違反の幇助?

 同法の条文を見てみましょう

第一条 貨幣、政府発行紙幣、銀行紙幣、兌換銀行券、国債証券及地方債証券ニ紛ハシキ外観ヲ有スルモノ製造シ又ハ販売スルコトヲ得ス

 この規定からは、紛らわしい外観という少々幅広な構成要件ですですが、「製造」と「販売」なので、ネット上にアップした画像が直接、抵触するという話にはなりません。

 しかし、その画像を用いて誰かが製造や販売を行うと、幇助犯(正犯を助成することで成り立つ犯罪)として扱われる可能性が少なからずあるということです。一般的にアップするだけでは成立しないです。かなり高精細な画像で印刷の仕方や紙質などを解説しながら書いてあって、そのとおりに印刷した人がいたら、画像をアップした本人が幇助犯を問われる可能性はありますね。少なくとも警察の事情徴収は受けると思いますし、コンテンツ運営者の規約違反などで削除対象になるでしょう。

 それよりも、それを見たネット民から批判を受けることが往々にしてあるので、炎上対策として「見本」とか入れたり斜線を入れたりしているわけですね。

 

 (2)通貨偽造罪の幇助?

 刑法にある通貨の「偽造」と「変造」の規定です。

(通貨偽造及び行使等)
第百四十八条 行使の目的で、通用する貨幣、紙幣又は銀行券を偽造し、又は変造した者は、無期又は三年以上の懲役に処する。
2 偽造又は変造の貨幣、紙幣又は銀行券を行使し、又は行使の目的で人に交付し、若しくは輸入した者も、前項と同様とする。
外国通貨偽造及び行使等)
第百四十九条 行使の目的で、日本国内に流通している外国の貨幣、紙幣又は銀行券を偽造し、又は変造した者は、二年以上の有期懲役に処する。
2 偽造又は変造の外国の貨幣、紙幣又は銀行券を行使し、又は行使の目的で人に交付し、若しくは輸入した者も、前項と同様とする。

 こちらも幇助犯は成り立つので、同様の理由で、配慮が必要となってきます。

 

 2 きっぷの場合

 

 (1) 有価証券偽造罪の幇助?

 きっぷは有価証券であるというのは、鉄ヲタなら知っていると思いますが、この場合に問題となるのが、刑法の有価証券偽造・変造罪の幇助犯です。

(有価証券偽造等)
第百六十二条 行使の目的で、公債証書、官庁の証券、会社の株券その他の有価証券を偽造し、又は変造した者は、三月以上十年以下の懲役に処する。
2 行使の目的で、有価証券に虚偽の記入をした者も、前項と同様とする。

 現に有効なきっぷの場合は有価証券として機能するので、それをきれいな状態でネットに画像をアップすることは、この疑いの指摘を受ける可能性があります。実際にはこの程度で検挙されませんが、ネット民の指摘は懸念されます。

 なので、紙幣に「みほん」などといれる慣例をきっぷに応用しているのだと思います。ネットが世に出回るまで、書籍に載っているきっぷに、ぼかしや斜線、「みほん」は入ってなかったですが、あれは無効になったきっぷだからという点もあるでしょう。

 

 (2) 駅員さんへの配慮

 誤発券の場合などに当該駅員が必要以上に批判される可能性があります。
 別に間違いなので、批判されても問題ないのですが、それは当事者間とか社内処分にとどまるべきでしょう。捺印されている補充券などの場合は、名前をネットにさらされて、ネットリンチみたいになってしまうからです。

 法的には、きっぷの画像がネットに出回ることは想定されるので、捺印した以上、そのあたりは受け入れていると考えられると思いますが、作成していただいた駅員さんには申し訳ないので、わたしは名前を伏せています。

 実務上は、固有番号をもちいるなどしてきっぷに実名を書くのはやめるべきと思っています。レシートの取り扱い者名がだんだんなくなっている傾向に合わせるべきでしょう。入出国審査のスタンプみたいに、その駅員用の番号(社員番号ではない)のはいったハンコを作ったらどうでしょうか。車掌のシャチハタ捺印も簡単に偽造できてしまうので、別の意味で専用印を作製すべきと思っています。

 

 (3) 駅への配慮

 マニアックなきっぷ購入にマニアが殺到しないためですね。珍しいきっぷなどは、ネット上に公開されるとすぐに押し寄せるので、駅に迷惑をかけないための配慮です。
 最近だと、みなさん料金補充券の発行駅は消す傾向があります。

 ネットがない時代は『交通趣味』にきっぷがアップされると、売り切れ続出の口座がよく出ました。殺到しても駅側が毅然としてふるまえばいいだけなのですが、とりあえず自分が発端で迷惑をかけるのはいかがなものかという点です。
 自分も買い方にテクニックをつかったきっぷや駅の配慮で特別に出してもらったものは購入できなくなるまでは公開してないです。

 なお、この点は、逆にネットにさらされて喜んでいる簡易委託駅などもあります。こういった駅は、きっぷの委託費収入なども大事なので、きっぷをだけを買いに来る客も歓迎されます。売り上げが上がるからです。

 吉備真備などは頼まれたので、アピールしました。某駅出札では、事務室に入れてもらって、お茶も出されて、券箱を一緒に眺めながらきっぷを売ってもらうという歓待ぶりでした。

 ただし、あまり仕事したくない駅員さんにあたると、乗らないなら売らないって言われますw。

www.estoppel.jp

 

 (4)身バレリスクの軽減

 これから乗る列車のきっぷの席番はさすがに隠しますね。

 定期券とかの名前の入ったきっぷも隠しますよね。
 国際連絡乗車券の場合はパスポートナンバーも隠します。

 申込用紙を書いている場合は、券番から個人情報も探れますが、駅がそのような情報を漏洩するわけはないので、特に券番は消していません。

 

 そう考えると、昭和のきっぷ本はすごいですよね。他人の名前が入った定期券が普通に載ってましたし。

 

www.estoppel.jp

 

www.estoppel.jp