今回は不通区間や列車の遅れなどにぶち当たった場合に、途中でいったんあきらめて有効期間を延長する方法です。乗車券を預けないといけないので、あまり現実的な利用価値はないと思います。
他経路乗車(JRの別の経路を通る)や別途旅行(JR以外の手段で向う)はリンク先を見てください。
とりあえず規定から行きます。
(列車の運行不能・遅延等の場合の取扱方)
第282条
旅客は、旅行開始後又は使用開始後に、次の各号の1に該当する事由が発生した場合には、事故発生前に購入した乗車券類について、当該各号の1に定めるいずれかの取扱いを選択のうえ請求することができる。ただし、定期乗車券及び普通回数乗車券を使用する旅客は、第284条に規定する無賃送還(定期乗車券による無賃送還を除く。)、第285条に規定する他経路乗車又は第288条に規定する有効期間の延長若しくは旅客運賃の払いもどしの取扱いに限って請求することができる。
(1)列車が運行不能となったとき
イ 第282条の2に規定する旅行の中止並びに旅客運賃及び料金の払いもどし
ロ 第283条に規定する有効期間の延長
ハ 第284条に規定する無賃送還並びに旅客運賃及び料金の払いもどし
ニ 第285条に規定する他経路乗車並びに旅客運賃及び料金の払いもどし
ホ 第287条に規定する不通区間の別途旅行並びに旅客運賃及び料金の払いもどし
ヘ 第288条に規定する定期乗車券若しくは普通回数乗車券の有効期間の延長又は旅客運賃の払いもどし
(2)列車が運行時刻より遅延し、そのため接続駅で接続予定の列車の出発時刻から1時間以上にわたって目的地に出発する列車に接続を欠いたとき(接続を欠くことが確実なときを含む。)又は着駅到着時刻に2時間以上遅延したとき(遅延することが確実なときを含む。)
イ 第282条の2に規定する旅行の中止並びに旅客運賃及び料金の払いもどし
ロ 第283条に規定する有効期間の延長
ハ 第284条に規定する無賃送還並びに旅客運賃及び料金の払いもどし
(3)車両の故障その他旅客の責任とならない事由によって、当該列車に乗車することができないとき
イ 第282条の2に規定する旅行の中止並びに旅客運賃及び料金の払いもどし
ロ 第283条に規定する有効期間の延長
ということで、運行不能、列車遅延、車両故障となった場合に有効期間の延長が申告できるわけですね。
それでは、有効期間の延長を規定している283条を見てみましょう。
(有効期間の延長)
第283条
第282条第1項の規定により旅客が有効期間の延長の取扱いを請求した場合は、乗車券、自由席特急券、特定特急券(座席を指定して発売したものを除く。)、普通急行券及び自由席特別車両券について、次の各号に定めるところにより取り扱う。
(1)旅客は、有効期間の延長を請求しようとする場合は、あらかじめ、関係の駅に申し出て、当該乗車券類を駅に預けるものとする。この場合、延長する有効期間は、次の期間とし、この期間を原有効期間に加算したものを当該乗車券類の有効期間とする。
イ 第282条第1項第1号に規定する事由による場合は、当該乗車券類を預けた日から開通後5日以内において旅行を再び開始する日の前日までの日数
ロ 第282条第1項第2号及び同項第3号に規定する事由による場合は、1日
●運行不能→開通後に5日以内に出発する必要がまずありますね。まあ、5日もあれば、いったん中断して現地で遊ぶのもありでしょう。むかしなら雪で足止めを食らって、駅前旅館で連泊みたいなイメージなんでしょう。
最長片道きっぷの最中で、親戚、実家や自宅が近い場合は、有効期間の延長を申し出ていったん自宅に帰ってしまうのもありですね。そうすれば、災害にあっても期間を節約できますし。実際に私の場合は、東海エリアで万が一、見合わせにあったらこれをやろうと思っていました。
●列車遅延→1日
●車両故障→1日
さすがにおまけは1日だけですね。
さて、もうすこし細かい点にも触れておきます。
(2)旅客は、旅行を再び開始する際、乗車券類に有効期間延長の証明を受けたうえ、これを受け取るものとする。
(3)旅客が、第1号の規定により延長できる期間を原有効期間に加算した有効期間内に再び旅行を開始しないときは、その乗車券類は無効として回収する。
まず受け取る際には有効期間の延長証明をもらう必要があります。現在だと、わかりやすいように業務連絡書を添付する形になると思います。マルス券だと、書き込む内容が多くなるうえ、自動改札を通しているうちに消えてしまうリスクがあるので、なるべく業務連絡書で発行してもらうよう頼んだ方がいいでしょう。
それから開通後5日+加算した日数までに再開しないと回収されてしまいますね。当たり前ですよね。
どの駅でも申告可能なのか?
最後にもう少し細部の争点にも触れておきます。現在も生きているとは思うのですが、国鉄時代の内規から。※JR各社によってこの部分の取扱いの差異はあると思います。
【日本国有鉄道 首都圏本部旅客営業取扱規程】
(乗車券の有効期間延長の取扱方)
第164条 規則283条の規定により、有効期間延長の取扱いをする関係の駅は、次の各号に掲げるとおりとする。
(1)乗車券券面区間内の旅行を一時中止した駅
(2)前号の駅と同一市町村内(東京都区内を含む。)にある駅
(3)乗車券面区間内から分岐乗車した着駅
(1)ここからは、乗車券の経路上ならどこでも良いことがわかりますね。実際の不通区間に達してなくても、延長申請はできるわけです。私の遭遇した事案でいうと、芸備線の志和口から三次まで不通という情報を広島駅に停車中の列車の放送で知ったときに、広島駅の改札で申告するような場合です。志和口まで行けるのですが、ホテルもないような志和口で待つわけにはいきませんからね。
では、このときに広島駅を既に出てしまっていて、志和口で知った場合はどうでしょうか。その場合は、無賃送還の申告をして、広島に戻り、広島で有効期間の延長を申告し、広島で遊んでいればいいのです。
これは、基準規程358条の2に「旅客が、規則第284条第1項のの規定により一時便宜の駅まで無賃送還の取扱いを受け、その駅で開通の待合せをする場合は、規則第283条の規定に準じて有効期間の延長の取扱いをするものとする」とあり、ホテルなどの最寄駅に戻れるよう無賃送還制度と併用できることがわかります。
なお、乗車券の経路上はどこでも良いといっても、現実的に不通区間に達しないような場合は除外されるでしょう。たとえば、最長片道きっぷで帯広にいて、吉都線の不通区間ができたから、有効期間の延長申請をするなどですね。旅客側に現実的な損失がないので、運用上、断られる可能性が高いです。
(2)はどういったことを想定しているかといえば、有効期間の延長申請のためにわざわざ、経路上の駅に行かなくても可能にする配慮です。たとえば、東京都区内から鹿児島中央までの乗車券をもっていて、今宿にでもいるときに九州新幹線の不通という情報が入ってきた場合です。わざわざ博多駅にまで行かなくても、今宿駅で申告すればよいということです。
この点はひょっとしたら現在のJRではやってくれないかもしれません。
(3)は、分岐乗車の場合ですから、一次的に経路から外れている場合です。最長片道きっぷで新旭川から旭川に区間外乗車して、旭川にいるときに石北本線が不通との情報が入った場合、旭川駅で申告するなどを想定しています。
あるいは、宇部線の居能駅にいるときに小野田線が不通となって、宇部新川駅で申告する場合で場合ですね。居能駅は無人なので、宇部新川で処理してもらうわけです。
ちなみに今宿にいた場合は(3)には該当しません。博多・姪浜間が地下鉄なので、分岐乗車と認定できないからです。
★ ★
無人駅にいる場合はどうすればいいのか?
本ブログはここで終りません。
最近のように無人駅や簡易委託駅が増えてくると、有効期間の延長申請ひとつも大変になってきます。簡易委託駅では処理できないので、近くの有人駅に行くことになりますが、そこまでの運賃を支払うのかという問題が出てきます。
乗車券をいったん預けるので、他経路乗車のように運転士や車掌に証明をもらったらよいという話ではないからです。
これは不要と考えます。定期券を購入するときに往復無賃でいけますが、それに準じて取り扱ってもらったらいいでしょう。ただ、経路上なら無賃送還制度をつかえばあまり問題になりませんね。
あり得るとしたら、宗谷本線にのっているときに石北本線が不通との情報を得て、旭川までいって申告する場合です。有効期間の延長は必然的に改札を出ることになるので、区間外乗車分の運賃が必要ですが、免除されるでしょう。
ということで、不通区間にあたったら、有効期間の延長を申告し、あとできちんと乗車するという方法もあるということを憶えておくと便利でしょう。現場で遭遇したら、このサイトを駅員さんに見せて下さい。話がスムーズに進むと思います。