5/22からスタートして、初めて運転見合わせに遭遇しました。ここまでは、いわき着8分延で途中下車印が押せなくなったことと、秋田発5分延で羽後亀田に途中下車できなくなったことだけという、奇跡の旅を続けてきました。ちなみに現在、新大阪まで到達していますが、傘は一度も使ってないです。やはり夏には強い雪男の私です!
さて、原因は落雷で、草津線全線が動かなくなったのです。朝の情報では昼ぐらいに復旧見込みとのことだったので、開通を期待して柘植まで向かったのですが。
ご覧の通り大量の列車がとまったまま。運転士さんも朝からずっと待っているとのことでした。あと2時間ぐらいで開通とのことでしたが、これ以上待たされても、行程が狂うので、ここは「他経路乗車」に出ることにしました。
私のとった方法です。
不通区間の柘植・草津間を避けて、大きく迂回しました。いちおう最長片道改め、最長連続きっぷの旅の流儀としては、不通区間は不可抗力なので仕方がないとしても、それ以外の区間への乗車に対しては努力義務(?)があるはずなので(なんのこっちゃ?)。
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ということで、今後、他経路乗車をされる方のためにポイント解説をしておきます。 他経路乗車とは、不通区間を避ける形でJRの別ルートを通るもので、申告することで無賃で正式に乗車可能な制度です。勝手にやってはいけませんよ。ただし、大規模な運行不能時は特認として、特段の証明は必要とせず一斉取り扱いとなる場合があります。
こちらが申告した事例です。基準規程360条によると、「券面に『不通何何線に変更』と記入し、かつ、駅名小印を押して」とあるので、それにそった形です。関西線の運転士に記入してもらいましたが、少し不十分だったので、木津駅で補足してもらいました。
ただ、個人的な見解としては、区間をはっきりさせて、もっと明確に記入すべきだと思います。「8/18 草津線全線見合わせのため、柘植・草津間他経路乗車(関西・奈良線・東海経由)」とかですね。今回のように大雨でこれだけ寸断されるのであれば、JRは作成事例を現場に配ったほうがいいでしょう。
さて、上記の経路図を見て、素朴にいくつか疑問がわいてくると思います。
1 どの程度のルートが許されるのか?
2 他経路乗車中に途中下車はできるのか?
3 普通しか乗れないのか?
4 迂回ルートの着駅(接続駅)はどうなるのか?
5 重複乗車は認められるのか?
6 重複乗車中に途中下車はできるのか?
7 他経路乗車中に途中下車した駅でまた下車できるのか?
災害時に役に立つように、このページをそのまま駅員さんに見せたら理解してもらえるように書いておきます。条文は赤色だけ読んでもらえばいいと思います。
旅客営業規則
(列車の運行不能・遅延等の場合の取扱方)
第282条
旅客は、旅行開始後又は使用開始後に、次の各号の1に該当する事由が発生した場合には、事故発生前に購入した乗車券類について、当該各号の1に定めるいずれかの取扱いを選択のうえ請求することができる。ただし、定期乗車券及び普通回数乗車券を使用する旅客は、第284条に規定する無賃送還(定期乗車券による無賃送還を除く。)、第285条に規定する他経路乗車又は第288条に規定する有効期間の延長若しくは旅客運賃の払いもどしの取扱いに限って請求することができる。
(1)列車が運行不能となったとき
イ 第282条の2に規定する旅行の中止並びに旅客運賃及び料金の払いもどし
ロ 第283条に規定する有効期間の延長
ハ 第284条に規定する無賃送還並びに旅客運賃及び料金の払いもどし
ニ 第285条に規定する他経路乗車並びに旅客運賃及び料金の払いもどし
ホ 第287条に規定する不通区間の別途旅行並びに旅客運賃及び料金の払いもどし
ヘ 第288条に規定する定期乗車券若しくは普通回数乗車券の有効期間の延長又は旅客運賃の払いもどし
(2)列車が運行時刻より遅延し、そのため接続駅で接続予定の列車の出発時刻から1時間以上にわたって目的地に出発する列車に接続を欠いたとき(接続を欠くことが確実なときを含む。)又は着駅到着時刻に2時間以上遅延したとき(遅延することが確実なときを含む。)
イ 第282条の2に規定する旅行の中止並びに旅客運賃及び料金の払いもどし
ロ 第283条に規定する有効期間の延長
ハ 第284条に規定する無賃送還並びに旅客運賃及び料金の払いもどし
(3)車両の故障その他旅客の責任とならない事由によって、当該列車に乗車することができないとき
イ 第282条の2に規定する旅行の中止並びに旅客運賃及び料金の払いもどし
ロ 第283条に規定する有効期間の延長
2
旅客は、旅行開始前又は使用開始前に、前項各号に定める事由が発生したため、事故発生前に購入した乗車券類(定期乗車券及び普通回数乗車券を除く。)が不要となった場合は、これを駅に差し出して、すでに支払った旅客運賃及び料金の払いもどしを請求することができる。ただし、乗車券、自由席特急券、特定特急券、普通急行券及び自由席特別車両券にあっては、その乗車券類が、有効期間内(前売のものについは、有効期間の開始日前を含む。)のものであるときに限る。
運行不能となったときには、他経路乗車ができることが書かれていますが、具体的な方法はよくわかりません。
そこで、285条を見てみます。
(他経路乗車の取扱方)
第285条
第282条第1項の規定による他経路乗車の取扱いは、次の各号の定めるところによる。
(1)旅客は、その乗車券に表示された着駅と同一目的地(不通区間以遠の駅において途中下車を予定していた場合は、その駅を含む。)に至る他の最短経路による乗車をすることができる。ただし、定期乗車券又は普通回数乗車券を使用する旅客は、他の経路による乗車中に途中下車することができない。
(2)旅客は、次に該当する場合に限って、他の経路を急行列車又は特別車両によって乗車することができる。ただし、のぞみ号等、グランクラス及びプレミアムグリーンにあっては当社が特に認めた場合に限る。
イ 急行列車に乗車した旅客が、列車が運行不能のため、他の経路を急行列車に乗車する場合。ただし、普通急行列車に乗車した旅客は、特別急行列車に乗車することはできない。
ロ 特別車両に乗車した旅客が、列車が運行不能のため、他の経路を特別車両により乗車する場合。この場合、特別車両に乗車できなかったときは、第290条の2の規定により払いもどしの取扱いを受けるものとする。
2
前項の取扱いをする場合は、既に収受した旅客運賃及び料金と実際乗車した区間の普通旅客運賃及び料金とを比較して、過剰額は払いもどしをするものとし、不足額は収受しない。この場合、原乗車券が割引乗車券であるときは、割引条件のいかんにかかわらず、実際乗車した区間に対する普通旅客運賃をその乗車券に適用した割引率による割引の旅客運賃によって計算する。
3
定期乗車券又は普通回数乗車券を使用する旅客について第1項の取扱いをする場合は、前項の規定にかかわらず、過剰額の払いもどし及び不足額の収受をしない。
4
第1項第1号ただし書の規定により定期乗車券又は普通回数乗車券を使用する旅客が他経路を乗車中に途中下車した場合は、他経路への分岐駅から下車駅までの区間に対する普通旅客運賃(特別車両に乗車した場合は、特別車両料金を含む。)を収受する。
これでいくつか疑問が解けると思います。
1 どの程度のルートが許されるのか?
→最短経路です。
ただし、「最短経路以外に順路があるときは、これを指定して乗車させる」(基準規程360条1項1号)ことができるので、他に合理的なルートを相談することが可能です。下記の事例で山口線経由ではなく、伯備線経由にする場合などです。どちらも一般旅客が選択しうる合理的な経路です。
その他には、名古屋から塩尻に行きたいときに中央本線が不通の場合です。
最短経路だと飯田線経由ですが、カタギの人が飯田線全線に乗りたいと思いますか?この場合、身延線、相模線、横浜線、東海道新幹線経由などの選択肢が出てくると思います。このあたりは駅の裁量事項になるので、じっくり相談してみる価値があります。実際に、この事例だと、新幹線とあずさを使って乗って行っていいよという放送が新幹線で流れることがあります。
今回の草津線普通の場合の他経路は名古屋をまわるという選択肢も思い浮かびますが、順路というには無理があるので、認められないでしょう。なので、奈良線経由一択です。
2 他経路乗車中に途中下車はできるのか?
→可能です。
「ただし、定期乗車券又は普通回数乗車券を使用する旅客は、他の経路による乗車中に途中下車することができない」とあるように、これ以外は、もともと途中下車可能な乗車券なら途中下車可能と読みます。いつも「途中下車自由の原則」と言っているように、乗車券というのは途中下車可能なことが原則で、制限する場合は例外にあたります。
ということで、さっそく思い浮かびました。JR小倉と稲荷は絶対、下車しようと。JR小倉駅は下車印を押してもらい、後日小倉駅(JR九州)の下車印と並べてみようと思ったこと、稲荷駅はランプ小屋を見ようと思ったからです。それ以外も何駅か下車して、他経路乗車を骨の髄までしゃぶってやりました。
なお、元のルートを戻る「無賃送還」の制度もありますが、この場合は途中下車できません。
3 普通しか乗れないのか?
→「急行列車に乗車した旅客」なら可能です。条文の通りです。
また、乗れない場合でも特急券なり急行券を別に購入すれば、乗車可能です。
なお、特急列車は特別急行列車といって、急行列車に含まれます。まあ、現代の急行といったら飯田線秘境駅号ぐらいしかないですけどね。
4 迂回ルートの着駅(接続駅)はどうなるのか?
上記の事例だと、本来のルートに戻る山科までしか行けないように見えますね。しかし、よく読むと、「不通区間以遠の駅において途中下車を予定していた場合は、その駅を含む」とあります。
ということは、もともと途中下車の旅をしていた私の場合は、草津が目的地となるわけです。
5 重複乗車は認められるのか?
上記の文言からは不明ですが、基準規程360条1項1号で「既に乗車した区間の一部を復乗して乗車させる」とありますので、可能です。私の例でいうと、柘植→木津です。
6 重複乗車中に途中下車はできるのか?
本ブログは更に突き詰めます。
他経路乗車中の途中下車ができることはわかりましたが、重複乗車区間でできるのか疑問に思いますね。これは可能です。禁止する文言がないからです。
ということで、押せなかった伊賀上野をたまたま引き返す列車の交換待ちがあったので押してもらいました。
なお、柘植から木津までは、元のルートを戻るので、無賃送還にあたり途中下車できないように見えますが、あくまで他経路乗車中なので、可能です。これが、木津であきらめて払い戻す目的などでの無賃送還なら途中下車できません。
7 他経路乗車中に途中下車した駅でまた途中下車できるのか?
同じように禁止する文言がないので可能です。
それをわざわざ実践するのが私です。たまたま大津のホテルを予約していたので、いったん他経路乗車中に大津で途中下車して、ホテルに荷物をおいてから草津に向かいました。その後、正規のルートでまたまた大津に途中下車。だから下車印も2回です。押した駅員さんも同じだったので、事情を説明して理解してもらいました。だいぶ面倒なマニアだなと思われたでしょう(ごめんなさい)。
ちなみに、他経路乗車中に途中下車した京都と、正規ルートで途中下車した京都の下車印です。これも事情を説明して、横に押してもらいました。1枚の乗車券に同じ駅の下車印が別の機会に押されるという数少ない事例ですね(他には通過連絡の8の字乗車券で同じ駅を通過する場合や、下車代印があり得る(下記参照))。
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最後に不乗区間の払い戻しについて触れておきますが。。。
「既に収受した旅客運賃及び料金と実際乗車した区間の普通旅客運賃及び料金とを比較して、過剰額は払いもどしをするものとし、不足額は収受しない」とあります。
ということは、全てが終わったときに、稚内→肥前山口(経由:・・・草津線・・・)と稚内→肥前山口(経由:・・・奈良線・・・)を比較してということになりますね。これを要求したら、嫌がらせに近いですね。まあ乗車券をとられてしまうので、やりませんけど。
通常の他経路乗車なら、もったいないので、きちんと証明をもらって計算してもらってくださいね。