都会の駅ではまずダメでしょうけど、田舎の駅で頼むと、改札から出してくれることがあります。たまたまいた駅員さんの好意である場合もありますが、今回は制度上、認められた「一時出場」の話です。途中下車愛好家としては気になる制度です。
なぜ、この話題を取り上げようかと思ったかというと、こちらの乗車券です。
この乗車券は101キロ以上ありますので(正確には100.1キロなので、切上げて101キロ)、そもそも途中下車が可能です。泊駅前の郵便局によったあと、無効印を押されずにこの乗車券を手に入れようと思って、少し高いですが購入しました。あいの風だけ単体で101キロ以上を確保するには全区間で買うしかありません(もちろんIRやえちごトキめき連絡で101キロ以上あれば途中下車可能です。)。
泊駅で下車を申し出たところ、駅員さんは「特別下車印」とテプラが貼られたゴム印を取りだして押してきました。どうやらネットを検索すると、泊駅は横に押されている富山駅と同じ途中下車印の設備もあるのですが、今回押されたのは菱形の特別下車印です。
菱形の特別下車印は、JRでいうと、下記の規定に基づいて押されます。 おそらくあいの風にも、似たような内部規程があるものと推察されます。
(接続駅等で一時出場させる場合の取扱方)
第145条
接続駅で駅の設備、接続関係等によつて、直通乗車券を所持している旅客を一時出場させる場合は、途中下車の取扱いに準じて、乗車券に途中下車印を押さなければならない。途中下車を認めない乗車券を所持している旅客を一時出場させる場合もまた同様とする。
(中略)
(注)この条の規定により途中下車印又は特別下車印が押された乗車券を所持する旅客は、途中下車をした旅客としては扱わない。
この規定による実例は、下の記事で取り上げた三河安城、大阪、三ノ宮の下車印が該当します。 すべて菱形ですね。
同じ記事の中で、美濃太田や豊橋の下車印も載せていますが、これもひょっとしたら特別下車印の役割なのではないでしょうか。両方とも乗換客も多いですし、ちょっと買い物に出たい客は多かったものと推察されます。高校生のときに、部活の大会からの帰りは、よく豊橋駅で降りたかったので、買いなおしていたのですが、特別下車が認められていたなら、買いなおす必要がなかったのだろうと悔やまれます。
(↓その後)
豊橋駅に知り合いの駅員さんがいるので、聞いてみました。下車前途無効の乗車券でも、下車が可能だそうです。なので、豊橋や美濃太田のように、買い物需要が多い駅は、いったん相談してみる価値はありそうですね。
左が通常の途中下車印、右が特別下車印です。
JR以外で特別下車印があるのは、ここぐらいではないでしょうか。
この泊駅は、会社間の境界駅ではないのですが、多くの列車はこの駅で乗り換えになりますから、ちょっと外に出たい人もいますよね。待合室におしゃれなカフェもありますし、トイレも改札外ですからね(下記参照)。
あいの風にきいたところ、やはり乗客へのサービスの一環として、途中下車できないような乗車券でも一時出場として特別下車を認めているとのことでした。なので、私のもっていた乗車券は、そもそも途中下車できるものですが、一時出場として扱われて「特別下車印」が押されたということになります。途中下車ではなく、一時出場なのです。
田舎の乗換駅で乗り換え時間があったら、改札で相談してみるのもいいでしょう。駅前の商店街が充実しているような地方の主幹駅に特別下車印が置かれているところもあるようなので、出してもらえるのではないでしょうか。
手持ちの過去の乗車券とネットで特別下車印を探してみたら、下記の駅で見られました。仙台、長岡、高崎、岡谷、三島、名古屋、美濃太田、岐阜、姫路、広島。やはり買い物や食事に便利なターミナル駅に多いみたいですね。
みなさんも地元のターミナル駅できいてみてください。
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なお、この件をさぐっていたら、面白い記事を見かけました。 行政に対する苦情を承る総務省の「行政相談」なのですが、JRの途中下車前途無効に対する硬直的な姿勢に対して批判が寄せられていました。簡単にいうと、乗換時間がある場合は、もっと柔軟に対応して、途中下車を認めるべきというものです。ここでは一般的な名称の途中下車で語られていますが、正確にはこの記事で取り扱った「一時出場」のことですね。