完全に規則マニア・キップマニアさん向けの話です。一般の方は何も面白くありませんよ。
特定都区市内制度
まずは制度の話から。特定都区市内制度は下記のような大都市の駅を発着する乗車券で、201キロ以上(山手線内からは101キロ以上)離れた駅まで乗車券を購入すると、「東京都区内」や「名古屋市内」といった表記になるものです。図の中のどの駅でも発着可能です。他に札幌、横浜、京都、大阪、神戸、広島、北九州、福岡にあります。
(JTB時刻表より)
これは、JRも旅客も手間なので、ある程度の駅を固めてしまって、特定のエリア内で発着できる乗車券にしてしまう趣旨です。今ではマルスがあるので、どれだけ小さな駅でも瞬時に運賃計算ができてしまいますが、昔は手計算ですから、大変な手間と時間がかかりました。しかし東京都区内ってなればすぐに計算できますし、そもそも常備の乗車券が用意されている場合が多く、マルスより早く発券できます。
この場合の運賃計算は中心駅で行います。東京都区内なら東京、名古屋市内なら名古屋です。
乗り越し制度
JRの専門用語でいうところの「区間変更」の一種です。方向変更と経路変更などもありますが、ここでは単純に乗り越しだけを扱います。さまざまな例外はありますが、原則的な取り扱い2パターンを上げておきます。
A 101キロ未満の乗車券をもっていて乗り越すとき
⇒ 発駅から最終の目的駅までの運賃から支払い分を差し引いて残額が必要です。
(「発駅計算」といいます)
B 101キロ以上の乗車券をもっていて乗り越すとき
⇒ 所持していた乗車券の着駅から最終の目的駅までの運賃が必要です。
(「打切計算」といいます)
これらを名古屋から日暮里まで行くパターンで見てみます。
(1)の最初に持っている乗車券はAのパターン(101キロ未満)です。
(2)と(3)の最初に持っている乗車券はBのパターン(101キロ以上)です。
そして、乗り越したあと、(1)と(2)は、冒頭の特定都区市内制度が適用されて、「東京都区内」と「東京山手線内」着となりますが、(3)は単駅名で、日暮里着です。
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これは新幹線の車掌に申告すると、同じように処理をしてくれます。東海道線に乗って行って、日暮里駅で下りるときに精算機に入れても同じように処理されます。
しかし、新幹線で東京駅まで着いてしまった場合はどうか。新幹線の乗換改札があるので、東京駅の新幹線改札の精算所で支払わないと乗換改札は通過できませんね。
制度からすれば、同じように区間変更券を作成することになりますが、あまりにも面倒です。
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前置きが随分長くなりましたが、そこであるのがこの乗車票ということです。(1)のパターンで日暮里駅で下りるときは「東京都区内各駅ゆき」の乗車票を使い、(2)パターンで下りるときは「山手線内各駅ゆき」を使います。
(3)のパターンはちょっと無理なので、別途片道乗車券が発行されます。
ということで、このような特殊な乗車票があるわけです。金は東京駅でもらってしまっているけど、区間変更券を作るのは面倒。かといって、日暮里で下りる乗車券がないのも困ってしまうので、その代わりということになるわけです。
むかしはこのように硬券の乗車票でした。
軟券常備券時代のJR東海東京駅のものです。東海道新幹線から降りた客用ですね。いまは磁気券に替わっています。
同じくJR東日本東京駅のもの。地紋がついているので、JR東海の物より印刷経費がかかっています。東北、上越、北陸新幹線から降りた客用です。
上野駅には現在もこのような形で常備券が残っています。
これっぽっちの話題でここまでくどくウンチクを語るブログもなかなかないと思います。最後まで読んだあなた。ご苦労様でした。