旅と鉄道の美学

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【営業規則系】 北千住・綾瀬の怪 2 綾瀬駅入場券の謎

 第2弾は綾瀬駅の入場券の謎です。

 上は昭和61年のもので、実際に窓口で発売されていたもの。下は平成29年のもので、記念のセットで発売されていたものです。

 現在は入場券を売っていません。

 

 ここでふと、疑問に思うわけです。営団の駅なのに、なぜ国鉄、JRの入場券?

 ヒントになるのは下記の規程です。

駅共同使用契約基準規程
(運賃及び料金の収得方)
第21条
共同使用駅における運賃及び料金の委託運輸機関又は処理機関の収得方は、次の各号に定めるところによる。

(1)入場料金、一時預り料及び貨物留置料は、処理運輸機関の収得とする。ただし、相互共同使用の場合の入場料金及び一時預り料は、取り扱つた運輸機関の収得とする。

 入場料金は処理運輸機関の収得とするとあるので、綾瀬駅を管理する営団地下鉄が持っていくように思いますが。。。。

 

 これを解き明かすには、綾瀬駅共同使用契約書(昭和46年4月19日)でわかります。

第1条 綾瀬駅における国鉄営団の駅務の区分については、次のとおりとする。
 (1)国鉄駅務
 綾瀬駅国鉄線方面相互間および綾瀬駅を経由して国鉄線方面相互間に発着するものに関する駅務
 (2)営団駅務
 綾瀬駅営団線方面相互間および綾瀬駅を経由して営団線方面相互間に発着するもに関する駅務

第3条 綾瀬駅における共同使用設備の国鉄および営団財産区分ならびにその使用範囲は、付属図面に示す通りとする。

第6条 綾瀬駅における国鉄役務は、国鉄の規定によって処理するものとする。ただし、列車運転の取扱いについては、別に定めるもののほか、営団の規定による。

第8条 綾瀬駅国鉄駅務処理に必要な備品および帳票類その他の消耗品は、営団のものを使用する。
 ただし、乗車券類(乗車券、急行券、指定券、寝台券および特別補充券等をいう。以下同じ。)および本部と営団において協議して定めたものは、国鉄で調整したものを使用するものとする

第9条 前条第1項ただし書の規定により国鉄が調整配布する綾瀬駅国鉄方面着乗車券類には、その左面左方に「〇社」(引用者注、原本は〇の中に社がはいった記号。)の記号を表示するものとする

第16条 綾瀬駅における運賃および料金の国鉄または営団の収得法は次の各号によるものとする。
 (1)入場料金は国鉄の収得とする。
 (2)前号に規定する以外の運賃および料金は、駅務の区分に従って国鉄または営団の収得とする。

 この規定によれば、確かに入場料金は国鉄が回収して、入場券も国鉄が用意して支給するので、上の入場券は合点がいきますね。でも、営団の施設になったにもかかわらず、施設利用料たる入場料金を国鉄がかすめ取っていくわけです。法的な部分で見ると、安全管理責任や営繕義務を営団が負っているにもかかわらず、施設使用料は国鉄が持っていくのです。例えば階段のステップが劣化していて入場券で入った客がけがをしたとします。その場合は、施設管理者、所有者とも厳格な責任(土地工作物責任)を負うわけですが、施設利用料は国鉄が持っていく。う~ん。。。

 18条では営団の駅務は営団が損害賠償責任を負い、国鉄の駅務は国鉄が損害賠償責任を負う規定になっています。入場券は国鉄の駅務として売ったとして、売上は国鉄に上納するのに(委託費は控除するとしても)、施設管理は営団の駅務なので、営団が責任を負うわけです。

 3条の財産区分の付属図面は不明なのですが、おおかたは営団の所有でしょう。

 何か釈然としません。 

 

 ここで代々木上原駅と比べてみます。

 代々木上原駅共同使用契約書(昭和53年3月20日)を読むと、代々木上原駅の入場料金と一時預り料金は小田急の収得となっています(同規則14条)。所有も管理も小田急なので当然でしょう。

 

 結局のところ、営団としてはもともと入場料金の設定はないし、営繕義務などを負うのは他の駅と変わりないことから、入場料金の収入は国鉄にくれてやるってことでしょう。営団の駅はもともと無料で入れるのですから、うべかりし利益が生じたわけでもないですし。

 

 とはいうものの、JRになって、入場券はなくなりました※。さすがにJRも申し訳ないと思ったのか、営団が変だと気付いたのか、他の駅と同様に無料となったのです。

 以上の考えを前提にすると、さらに首を傾げるのが、JRになってから発行された上記の記念入場券です。これって本来、売れないですよね?なんだか、他人のシマで勝手にシノギをしているJR東日本って感じです。あるいは国鉄当時の上記の契約書がまだ生きていて、久々に綾瀬駅の入場券収入だったのかもしれません。

 2枚目の入場券の謎は続く。。。識者のコメント求む

 

 ※2023.12.27補足:1991年の入場券は確認できるので、JRになってもしばらくは売っていたようです。コメントで指摘があったので、補足します。

 

metroarchive.jp

 

 ちなみに手回り品切符です。

 規則通り「社」が入っています。まだまだ国鉄を感じられる一品です。

 これはJR用なので、亀有方面に乗る場合か北千住で常磐快速線に乗り換える客に出すものです。千代田線でそのまま行く客は無料なので出しません。

 

www.estoppel.jp

 

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