旅と鉄道の美学

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【営業規則系】 特定都区市内途中下車禁止 → 違反してみた! (そして乗車変更はできるのか?)

 さて、みんなが憧れる日本一高い硬券乗車券の裏側です。

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 左側の「下車前途無効」は分かりますよね。下車したらその先は無効でっせということです。

 右側を見てみましょう。途中下車禁止です

 

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 東京都区内→東京都区内のループ乗車券を見てみましょう。

 こちらも同じように「都区内下車禁止」とあります。

 

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 では、東京都区内→峰山(京都府)の乗車券を使って、新宿で乗って、秋葉原で急にメイドカフェに寄りたくなったりした場合はどうしましょうか(俺は興味ないけど)。これも禁止されるのでしょうか。

 

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 本ブログはここで終わりません。

 じゃあ、違反してやろうじゃないかということで、さっそく実践です(不正行為じゃないですよ)。

 

 ちなみに、現在のマルス券では、途中下車禁止の表記はでてきません。これは誤解を与えるような文言なので、JRになってからはほとんど使われてないと思います。京都丹後鉄道の乗車券にはまだ残っていますが、国鉄宮津線→JR宮津線北近畿タンゴ鉄道→京都丹後鉄道と時代を経た今も静かに国鉄時代の歴史を感じられるわけです。

 JR区間に対して、京都丹後鉄道がエラそうに「途中下車禁止」とか、お前が言うなよ!って思うかもしれませんが、別に悪気はないのです。

 

 では、まず広島死闘編です。

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 可部線可部駅から乗って、広島駅で用事があったので、改札口で申告しました。すぐに戻るのであれば一時出場で出してくれるようでしたが、夜になると伝えたところ、ここまでの片道運賃を支払ってくれとのことでした。

 その後、可部の入鋏の穴部分に「誤入鋏」表示をして乗車券を返してもらいました。

 

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 次は東京決戦です。

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 秋葉原駅で下車した際の処理ですが、おなじように誤入鋏として処理されました。

 ちなみに、東京駅は東京駅発の特急券をもっていたら、そこまでの運賃を支払わずに改札をだしてもらえます(東京駅だけの独自ルール)。

 ※上野駅も出してもらえるようです(コメント参照)。

 

 それでは、営業規則を確認してみましょう。今回の事案は156条、165条と166条が該当します。

(途中下車)
第156条
旅客は、旅行開始後、その所持する乗車券によって、その券面に表示された発着区間内の着駅(旅客運賃が同額のため2駅以上を共通の着駅とした乗車券については、最終着駅)以外の駅に下車して出場した後、再び列車に乗り継いで旅行することができる。ただし、次の各号に定める駅を除く。
 (中略)
(2)次に掲げる区間(以下「大都市近郊区間」という。)内の駅相互発着の普通乗車券を使用する場合は、その区間内の駅

 (後略)

 この条文からすると、上記の広島市内や東京都区内の駅では途中下車はできないこととなるので、乗車券に途中下車禁止と記載されていることは間違いではないですね

 

(乗車券が前途無効となる場合)
第165条
乗車券(往復乗車券、連続乗車券又は普通回数乗車券については、その使用する券片)は、次の各号の1に該当する場合は、その後の乗車については無効として回収する。
(1)旅客が途中下車できない駅に下車したとき
(2)旅客が第312条第1項第1号、第313条又は第314条の取扱いを受けたとき。
(3)鉄道営業法(明治33年法律第65号)第42条の規定によって車外に退去させられたとき。

 1号で、広島や秋葉原は途中下車できない駅にあたるので、下車したときは無効になってしまいます。新幹線にも乗らないうちに無効になってしまってはたまりません。

 

(前途無効となる乗車券の特例)
第166条
旅客が第86条及び第87条又は第160条(第70条に掲げる図の太線区間内の駅相互発着の場合を除く。)の場合の乗車券を使用して、発駅と同一の特定都区市内若しくは東京山手線内又は第70条に掲げる図の太線区間内にある駅に下車した場合であって、実際の乗車駅と下車駅との区間に対する普通旅客運賃を支払ったときは、前条の規定にかかわらず、その乗車券を旅行開始前又は使用開始前のものと同一の効力をもつものとして取り扱う。ただし、旅客運賃の払いもどしについては、旅行開始後又は使用開始後の乗車券として取り扱うものとする。

 そこで、166条では、「実際の乗車駅と下車駅との区間に対する普通旅客運賃を支払ったとき」を更に例外として扱って、「旅行開始前又は使用開始前のものと同一の効力をもつものとして取り扱う」とあります。

 

大原則から整理するとこうなります。

1 途中下車は原則有効(いつも言っている「途中下車自由の原則」ですね。)
 ↓
2 でも特定都区市内発着の乗車券でそのエリアで下車できない(例外)
 ↓
3 無効になる
 ↓
4 でも乗ってきた区間の運賃を支払ったら可能(更に例外)

 

 では、規則上はどのような処理が適切なのでしょうか。

 「旅行開始前又は使用開始前のものと同一の効力をもつものとして取り扱う」としか書かれていませんので、不明です。

 そこで、基準規程161条をみると「原乗車券にその駅の途中下車印を押すものとする」とあります。しかし、広島駅、秋葉原駅共に途中下車印の処理ではなく、誤入鋏の処理でしたので、現在はJR東日本、西日本共にこのような処理に統一ルールが変更になっていると思われます。

 

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 本ブログはここで終わりません。更に追求します。

 途中下車処理であっても、誤入鋏処理であっても、166条の但書により払い戻しは出来ないことはわかります。

 そこで気になるのが、未使用乗車券と同様に乗車変更はできるのか、あるいは使用開始後の乗車券として区間変更券にとして扱われるのかです。区間変更券だと、過剰分の戻りがありませんので、損をしてしまいます。

 

 払い戻しができないのであれば、乗車変更もできないと考えることもできますが、条文を素直に読めば、わざわざ「旅客運賃の払いもどしについて」とあるので、乗車変更は含まないことを意図して設けられていると解釈できます。旅客に不利になるようなことなので、明文に忠実に判断出すべきでしょう。

 したがって、払い戻しはできませんが、乗車変更はできると考えていいと思います。そう考えると、誤入鋏処理というのは整合性がありますね。