旅と鉄道の美学

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【営業規則系】 なんとも複雑な運賃計算 幽霊折尾駅の登場 新下関⇔博多の怪 

 国鉄改革のときは、全国統一サービスを崩さないと言っていたと思いますが、 途中でJR北海道、四国、九州が値上げをしました。そのときに問題となったのが、新下関と博多の間です。この区間は新幹線がJR西日本山陽本線JR西日本鹿児島本線JR九州となるので、金額が変わって選択乗車の制度をとれなくなってしまいました。

  したがって、別経路として指定をするわけですが、変更する客が多いうえに、福岡市内、北九州市内といった特定都区市内制度も関わってくるので、意外と複雑なのです。 

  

  まずは東京都区内から福岡の筑前前原までの往復乗車券です。経由をよく見てください。ゆきは新幹線ですが、かえりは鹿児島本線です。本来、往復乗車券は同じ経路でないといけないのですが、ここだけは別であっても、往復にできる特例があります。  

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  こちらが発行事例です。「新在往券ゆき」と「新在復券かえり」です。ひらくと、「新幹線・在来線往券ゆき」「新幹線・在来線復券かえり」ですが、さいごの「ゆき」と「かえり」は日本語として余分ですよね。2の「往復」であれば、「往復券ゆき」「往復券かえり」で自然なのですが。

 

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 さて、新幹線経由の乗車券で、鹿児島本線に乗りたい場合はどうなるのか?

 冒頭の通り別経路としてみるのが原則ですので、区間変更(経路変更)となります。

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  これは新幹線経由の倉敷⇒博多南の乗車券を差し出して、新下関⇒博多間を山陽本線鹿児島本線経由に変更したものです。160円が追加費用として取られました。原券の7150円は新幹線経由の運賃です。 マルスなので、さくっと出してもらえました。

 車内で変更する際もすぐ手続してもらえます。

 

 こちらは専用券の事例です。 

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 博多⇔小倉間では、変更の需要が多いので、専用券が用意されています。左が小倉の精算所、右が赤間の改札で途中下車する際に発行されたものです。これ自体では有効にはならず、原券と一緒にもつことで有効となります。上のように、通常の区間変更券を多数の客に発行していたら、改札も長蛇の列になってしまいますし、手書きになった場合は計算を間違えるリスクもありますからね。

 1日有効と2日有効となっていますが、これは原券の有効期間に併せて記入されます。たとえば、東京都区内から福岡市内の往復乗車券で、初日に変更したら原券と同じ14日間有効と記入されます。

 

 こういった地方の事情に応じた特殊なキップの存在も面白いですね。 

 

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 以上ような制度ですが、北九州市内となっている乗車券で乗り越す場合は、話が難解になってきます。たとえば東京都区内⇒北九州市内の乗車券をもっていて、新幹線を利用して乗り越した場合です。かつてのように新幹線と鹿児島本線の経路を同一とみなすのであれば、北九州市内の端にあたる折尾で切って、折尾からの区間変更券を作成すれば簡単です。

 しかし、現在は、別経路で、新幹線経由となると小倉の次が博多ですので、小倉にするしかないようにも思えます。でも、これでは旅客に損失が大きくなってしまいます。

 

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  そこで、特例が認められていて、上図のように新幹線の路線上に幽霊折尾駅とでもいえる仮想駅を設けるのです。

 

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 これが実際に発行されたものです。新幹線・福岡市地下鉄を通って筑肥線周船寺駅までの乗り越しです。経由が新幹線なのに、折尾になっています。この特例を知ったときは、久々に国鉄のような営業規則の妙技が飛び出したなって感心しました。まあ客にとっては、ますます難解になるだけなんですが、営業規則ヲタからすると、興味深い制度なのです。

 

 これは逆のパターンも考えられます。鹿児島方面から福岡市内着の乗車券で小倉まで乗り越した場合は、福岡市内の端にあたる福工大前⇒小倉の区間変更券となります。 

 

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