日本で唯一の定期寝台列車、それにノビノビシートもついているサンライズ出雲・瀬戸です。ブルートレインを知らない世代は、この列車が憧れの対象となっているとも聞きます。また、最近は女子旅にも人気の列車ですね。
まず、ブルートレインで出張に行っていた世代は、パッと見、印象が違うと思います。それもそのはずで、これまでの寝台特急のイメージを覆すことをコンセプトにして、内装はミサワホームが手掛けているので、昭和の寝台車感がいい意味で払しょくされています。古い物好きの私も納得の車両です。ブルートレインを知らない世代からしても陳腐化していない落ち着いた印象を持ってもらえると思います。
さて、今回の乗車は、数年前に東京で本社会議のあと、広島出張が入った際に利用して以来です。入ったというか、そのときは、ちょっと強引にスケジュールを合体させたのですが、岡山乗換で乗継特急券ですし、宿泊費も浮いていますので、経費としては安くなっています。
なので、広島あたりの出張のときはお勧めですよ。新幹線だとぐったりしますからね。それに岡山だと朝早すぎるので、広島ぐらいがちょうどいいのです。いちど乗ったらわかります。横になって移動することが、どれだけ楽なのか。私なら昼に走っていても利用します。ちなみに、岡山で降りたら、駅前のサウナで一風呂あびてから新幹線で行くとちょうど良い時間に広島に到着します。
例えば広島に出張して取引先と一杯やったパターンです。
●新幹線
広島20:01⇒(のぞみ64)⇒東京23:45
運賃11660円+特急券(通常期)7420=19080円
●新幹線+サンライズ
広島21:03⇒(のぞみ98)⇒岡山21:43
岡山22:34⇒(サンライズ)⇒東京7:08
運賃11660円+新幹線特急券(通常期)3210円+サンライズ特急券(通常期:乗継割引)1620円=16490円
2590円も安くなります。出張の多い人は分かると思いますが、だいたい出張先で呑むのは18時開始が多いですから、2時間呑んで、駅までブラブラ移動して、広島を21時ぐらいに出るのはちょうどいいですよね。で、すげ~眠くなる時間に横になれるってのは優雅ですよ。
個人的な意見ですが、呑んだ後の新幹線3時間ってすごい苦痛なんですよね。それに東京に着いてから家に帰るのももっと苦痛。
なお、この列車のノビノビ座席は激戦ですが、直前に払い戻しがでることもありますので、広島で帰る直前に窓口で見てもらって、空いていたら変更するのもありでしょう。
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さて、この車両も見た目とは裏腹に老朽化が進んでいますので、そのうち無くなるのではないかと噂されています。もう20年たっていますから、あと10年でしょうか。満席にちかい人気を誇る列車といえど、イレギュラーを嫌う最近のJRからすれば存続は厳しいかもしれません。特にこの列車は、①夜行、②越境(しかも3社間)、③寝台(リネン手配が手間)などの面倒な要素をもっていますから。それに運転開始当時とは状況がかわっているので、JR東海が手間のかかる在来線車両は嫌がると思います。
個人的には、夜行バスの運転手不足のいま、復活すべきは夜行列車だと思うのですが。。。この辺はまた別記事でコラムにします。
今回はノビノビシートを利用してみましたので、激戦のレポートをお届けします。
倉敷から東京で3560円です。これに乗車券の10480円が必要です。3枚になっている点は、岡山⇒東京を変更する際にマルスに戻さないようにお願いしたからです。詳しい事情は下記参照。
乗継割引を利用して安く購入するコツ
東京⇒岡山の事例で示しますが、結論から言うと、新倉敷まで買った方が安くなります。
まず普通に岡山まで購入する場合です。
●乗車券 東京都区内⇒岡山 10670円
●特急券 東京⇒岡山 3300円
次に、岡山で新幹線に乗り換えて新倉敷まで買った場合。
●乗車券 東京都区内⇒新倉敷 なんと同じ10670円!
●特急券 東京⇒岡山 1650円
780円も浮いてしまいます。これは新幹線と在来線の特急を乗り継ぐと在来線が半額になる制度を活用した一例です(九州新幹線や東京乗り換えなどは不可です)。
新幹線の特急券は使わなくてもいいですが、払い戻しはできません。
今回は井原鉄道を巡ってからの乗車なので、倉敷から乗車しました。早めにホームに行ってブラブラしてみました。
隣にやくもがやってきました。今回、乗車しようと思っていたのですが、直前に姫新線の土砂崩れがあり、新見周りをやめて井原鉄道に変更しました。
サンライズ到着予定の5番線ですが、出発反応標識の表示は「伯6:伯備線6番」、「上6:山陽本線上り6番」ですね。となりのホームとの間に中線(ホームなし)があるので、「5番のりば」の6番なんでしょう。乗務員泣かせのやつですね。
ノビノビ座席のどこが良いのか?
ゴルゴ13に尋ねてみると、①壁を背にして、②出口に近くて、③室内全体が見渡せるポジションと言うでしょう。ダーティーハリーがサンライズに乗車しても同じ場所を選ぶと思います。
出てくる答えは、角の上段。席番にすると、1Cか7Dです。
さて、この車両は激戦なので、指定券をとる段階から勝負が始まります。今回は万全を期して、1か月前の10時打ちをお願いすることとしました。更に1Cは狙う人が多いと予測されることや、調整席になっているリスクも考慮して、7Dを第一希望にして、出雲と瀬戸の両方を先に見てもらうよう依頼しました。結果、ここは吾輩の勝利!第一希望の出雲の7Dをゲットです。
※10時打ち:指定券の発売は1か月前の10時からなので、10時ピッタリに入力してもらうよう駅や旅行会社に頼むこと。小さな駅で、PC操作が得意そうな若い駅員(できればゲーマーっぽい人)を選ぶと良い。10時ごろに待ち客などのリスクもあるので、個人的にはメジャーではない旅行会社に事前に頼むのが一番無難ではないかと思う。更に受付順に処理されることが多いので、できるだけ早く頼むのが良いだろう。複数窓口に頼む者もいるが、モラル的にちょっと考えものである。
※調整席:破損、汚損や重複発売などに備えて車掌の管理している席のこと。車掌の裁量で発売可能。以前は国会議員などが権威をかさに、車掌に無理やり指定券を売らせる行為があり問題視されたこともあった。通常1番ABに割り当てられていることが多い。
※券売機での指定券購入:自分でやろうとしても席番指定ができない。事前に実験したが無理だった。
角の上段がとれない場合はどうするか?
壁の方が落ち着くという方は、角の下段である1Aか7Bが良いでしょう。あとは揺れが少ないという意味で車両の中間の上段を選択すればいいと思います。自動ドアなので、昔の客車のようなドア音問題はありません。
下段は、窓を開けているとホームからもろ見えなのでおすすめしません。朝の通勤客に寝顔を見降ろされる状況になります。もちろんブラインドはありますが。20年近く前に東海道線などで通勤していた方は、カーテンを閉め忘れて、浴衣をはだけたオッサンが寝ている寝台車が目の前にきた経験などあろうかと思います。
これはノビノビ座席の車両です。通路側ですが、座席側も同じような窓位置になりますので、ホームの客からちょうど見やすい位置になります。
こちらは寝台です。下段は思いっきり中まで覗き込めますね。
ノビノビ座席概況
それではノビノビ座席の解説に入ります。 乗客は出張客15%、外国人15%、大学生らしき人50%、社会人女子旅風(一人旅とも)20%といったところです。
これは通路で、足を通路に向けて寝るような形になっています。別に逆でもいいですが。
上段の風景です。岡山到着前なので、1/3ぐらいです。
7D。吾輩の領土です。
コンセントは1か所なので、ここでも激戦です。
臭そうな足が見えていると思いますが、ちょうど寝た状態の目線で撮影してみました。
側面用のカーテンレールがあるので、最初はあったのかもしれません。
天井についているエアコン吹き出し口。方向も選べるし、閉じることもできるという優れもの。不動産の仕事をしているのでよくわかりますが、こういったところに住宅設計のコツが詰まっているのだと思います。
天井には個別の読書灯もあります。
備品はシーツのかぶった毛布と枕カバーです。私のおすすめの方法は、毛布を敷いて、持っている着替え等を枕にしてその上にカバーを乗せる形です。夏はこれで十分でしょう。冬はコートを掛布団代わりにすればいいと思います。
姫路から横浜まで完璧に熟睡できました。もっとも、私は事務所に段ボールを敷いても寝られるぐらい枕を気にしない人なので参考にならないかもしれません。ちなみに枕が変われば変わるほど、寝床の新鮮味が増すので、より熟睡できるタイプです。
窓からの風景はこんな感じです。
7番の下段です。ここの二つは東京まで空いていたので、調整席かもしれません。階段部分が壁状になっているので、若干、「基地っぽさ」が増して、いいかもしれませんね。
シャワー争奪戦
これもこの列車の真の激戦といえるものです。前回はシャワーカードの購入はできたものの、いつまでたっても空かないので、あきらめて断念しています。今回はカードすら買えませんでした。万全を期して、倉敷から乗ったのですが、既に売り切れ。岡山到着時には、大学生らしき人数人がすぐにカードの券売機に来て、悔しがっていました。学生が休みでなければいけるかもしれません。
下りは東京、横浜、上りは出雲市、米子でないと購入できないのではないでしょうか。前回は横浜に着く前に購入しています。
ラウンジの横に自販機あり。
前回乗った時のシャワーカードです。
脱衣所部分全景。
カゴとくず物入れ。
ドライヤー。
洗浄ボタン。
シャワー室全景。
残り時間が表示される。
ボディーソープとシャンプー完備。
B寝台
前回の写真がどこかにいっていってしまったので、空いていた部屋を撮影してきました。出雲で10室ぐらい空いていたようです。
通路です。どの車両も寝台はこのような形です。
2名もいけるシングルツインです。上のベッドは収納できます。
こちらはシングルでいいと思います。
★ここがポイント
1名用のB寝台は、シングルとソロの2種類ありますが天井高が違いますので、シングルを選ぶようにした方がいいと思います。金額も違います。
そのほかの設備
ラウンジ横の自販機。
ラウンジです。
出雲と瀬戸の連結部分です。
運転席を広くとるため、片側に寄っています。
隙間から運転席が覗けました。
車掌さんは全区間乗務するのか?
寝台特急の車掌長になりたかった吾輩としては、勤務体制が気になります。さっそく検札にきた米子車掌区の車掌さんに尋ねてみました。現在は、出雲市⇔姫路 / 姫路⇔米原 / 米原⇒熱海(JR東海) / 熱海⇒東京(JR東日本)という交代制だそうです。以前は米子車掌区が東京まで担当したと懐かしそうに語っていました。米子車掌区といえば、寝台特急出雲を担当していた伝統ある車掌区ですね。
東日本大震災後に、非常事態に備えて、現場の事情をよく知る車掌が担当するのがベストということでぶつ切り乗務になったそうです。
確か国鉄時代は、乗客サービスの側面から夜行列車は基本的に同じ車掌が担当するという原則があり、JRになって北斗星までは維持されていました(運転士はおおむね2時間で交代します。)。北斗星は青函トンネルを通るため、非常事態があった場合に、普段から熟知しているJR北海道の車掌が対応すべきという運輸省の方針に沿ったそうです。サンライズも同じ方針なんですね。
ということで、皆さんも一度乗ってみてください。
横になって旅をするというのが、どれだけ楽なのかわかると思います。
なお、今回、A寝台が空いているのかわからなかったので、写真は撮りませんでした。次に広島出張などが入った場合はA寝台にチャレンジしてレポートします。