旅と鉄道の美学

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【コラム】 運転士は君だ♪車掌はいない♪ 車掌という職種はなくなってしまうのか?

 童謡としては、「運転士は君だ♪車掌は僕だ♪」が正解なのですが、車掌という職種が近い将来なくなってしまうかもしれません。寝台特急の車掌長になりたかった自分としては気になるところです。 

 

1 ワンマン化が進んでいる

  国鉄時代は、たとえ1両であっても運転士と車掌がいましたが、JRになってワンマン化がどんどん進んできました。私鉄ではもっと早くからワンマン化が進んでいましたね。

 国鉄時代は、運転士職と車掌職は明確に別のキャリアーコースになっており、セクションも運転区と車掌区といった形で分かれていました。いまでも岡山車掌区などは、名称も含めて国鉄時代のままですよね。なので、民営化するまで両方の職種を近づけるといったことはやりにくかったのです。労働組合との関係もあったと思います。

 

 地方私鉄のラッシュ時間にたまに車掌を見ますが、名札をみると「運転士」と書かれていることが多くなっています。尋ねてみると、車掌職はいなくて、運転士職なんですが、ラッシュ時だけ車掌業務をやっているそうなのです。客が多いので車内精算をしておかないと、降車時に時間をとられて列車が遅れてしまうからだそうです。 

 

 ワンマンと言えば田舎路線の代名詞のようですが、都心の地下鉄もワンマン運転になってきていますから、技術が進歩してくると、都心であっても車掌は廃止されていくのでしょう。

 

 

2 社内精算が無くなってきている

  これはIC化が進んで、乗り越し精算などが減っていることが主要因ですね。ただ、ICに対応していなくて、適度に乗客が多い路線では、車掌をはずせないでいる場合もあります。代表的なのは飯田線です。この路線では、JR化後、かなり早い段階でドア扱い業務を車掌から除外して運転士がやるようになりましたが、乗客の相手で忙しすぎるからです。マニアの間では、日本一、運動量の多い車掌と言われています。実際に経験者に聞いてみても座る暇はなかったようです。

 乗ってみればわかりますが、駅間距離は短いし、無人駅は多いし、出口も一定ではないので、何度も列車内を動き回るのです。ポケットの小銭の音は飯田線の車掌が日本一だったと思います。

 しかも観光シーズンになると、数名の観光客が無人駅で着駅精算をする上、地元の年寄りまで加わって平気で10分15分と遅れだすのです。都会からくる乗客は、着駅の精算機に入れたらいいだろうと思っているのです。なので、豊橋駅を出てからは、しつこいぐらい先に車内精算をしてくれって案内放送をします。これは降車駅で時間をとられるのが嫌だからです。

 

 また、都心の駅では車掌が回ってくることもほとんどなくなり、特急列車も検札をするのは自由席客だけになってきている路線も増えています。むかしは、中央特快などは検札専門の車掌が二人組で乗り込んできて、華麗なまでにすさまじいスピードで検札をしている光景を目にしました。とにかく車内補充券を作成するスピードがスゴかった。

 いまは新幹線の車掌も乗り越し精算というより、防犯巡回にちかいですから、全面的に警備会社に委託したり、パーサーの仕事にしたりといった方向になっていくでしょう。JR本体の正社員の給料は高いですからね。

  

3 乗客対応はアテンダントの仕事になってきている

  新幹線や在来線のグリーン車、特急列車などで増えてきていると思います。最近は難しい区間変更券の発行などもないですし、車内補充券発行器をつかえば計算を間違えることもないので、研修期間の短いアルバイトのアテンダントが車内精算をするようになってきています。安全にかかわる運転業務には従事しないので、それでよいのでしょう。

 この点でも車掌という職種がなくなりつつあります。

  

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 さて、下記のように別の方向で「車掌」「運転士」といった職名はなくなっていく流れもあるようですね。

www.fnn.jp

 しかし、これは明らかに人材不足による運転士の促成栽培を目指しているとしか思えません。IT化によって安全の確保が向上している現在であれば、職域の統合によるリスクはある程度軽減できるかもしれませんが、種類の違う職務を掛け持ちすると、ミスが起きやすくなることは事実です。ただ、大手私鉄を中心として車掌の社内精算業務を廃止していることを考えると、複雑な営業規則系の知識やスキルは伸ばさなくてもよくなるので、運転業務に専念できることになります。JRもこのようになれば、車掌を運転業務中心に動かすようなことになるでしょうから、運転士の職務に近づいてきます。

 

 なお、この記事の中で、問題にしたいのは、職種を統一するのはいいとしても、なぜ社内試験を廃止するのかです。安全やサービスの確保に必要だから行っているのであって、職種の統一とは関係ないのですから、この点の説明が不十分ですね。おそらく「社内外の経営環境の変化」がコスト削減を意味するのでしょう。必要な社内試験を残したうえで職種を統一すればいいだけですからね。

  

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 JR各社は一斉に赤字転落しましたが、今後は、人件費削減のため、車掌の廃止を積極的にすすめていくものと思います。駅員の方は各社ともひと段落しています。主幹駅だけに本体の正社員を配置して、周辺は子会社か地元自治体などへの委託でコスト削減を図っています。

 車掌が減っていくのは、当面は安全にかかわらない旅客対応でしょう。たとえば車掌2名乗務の特急を車掌1名乗務にして、乗客が多い区間だけ集中的にアルバイトのアテンダントを乗せて検札をやらせるとかですね。

 いまひとつは、ワンマン運転の技術研究を大幅にすすめる方向に一気に動くでしょう。

 

 個人的にはさびしいですが、時代の流れはこうだと思います。