旅と鉄道の美学

鉄道を中心とした国内外の旅と切符など。リンクフリーです。

【営業規則系】 新下関・博多の怪 第4弾 区間外乗車での途中下車

 新下関・博多がらみ第4弾は、西小倉・小倉間と吉塚・博多間の区間外乗車で途中下車した場合の処理です。JRの取り扱いが間違っているのではないかという点を説明していきます。

 

1 区間外乗車の規定

 たとえば、中津→小倉→(新幹線)→博多→篠栗を想定します。この項目は前回記事の復習です。

 まず乗車券をどのように購入するかですが、下記のような特例があり、新幹線に乗るとしても、中津→西小倉→吉塚篠栗まで片道で購入することが可能です。

【旅客営業基準規程】

(西小倉・小倉間及び、吉塚・博多間の区間外乗車に係わる片道乗車券等の発売方の特例)
第43条の2 前条及び規則第26条の規定にかかわらず、南小倉以遠(城野方面)の各駅と博多南若しくは博多以遠(竹下方面)の各駅相互間、柚須以遠(原町方面)の各駅と小倉以遠(門司又は新下関方面)の各駅相互間又は南小倉以遠(城野方面)の各駅と柚須以遠(原町方面)の各駅相互間を乗車する旅客が、新幹線(小倉・博多間)に乗車する場合は、西小倉・小倉間又は吉塚・博多間において途中下車しない限り、当該区間営業キロを除いた片道乗車券又は往復乗車券を発売する。

 小倉や博多で下車したい場合は、中津→小倉/小倉→博多/博多→篠栗と分けるか、西小倉・小倉と吉塚・博多間を別に購入する方法になります。

 

 そして、「西小倉・小倉間又は吉塚・博多間において途中下車しない限り」という文言は、次のような区間外乗車の規定に対応しています。小倉や博多で途中下車しないのであれば、上図の赤枠部分の運賃は不要ということです。

 

(分岐駅通過列車に対する区間外乗車の特例)
第160条の4
次に掲げる区間左方の駅を通過する列車に乗車するため、同駅から分岐する線区にまたがる乗車券を所持する(次に掲げる区間の左方の駅を通過する列車からの乗継を含む。)旅客(定期乗車券を所持する旅客を除く。)が、同区間を乗車する場合は、当該区間のうち左方の駅以外の駅において途中で出場しない限り、乗車券面の区間外であっても乗車することができる
 (中略)
西小倉・小倉 間
吉塚・博多 間
 (中略)
(注)西小倉・小倉間又は吉塚・博多間について、新幹線に乗車する場合の取扱いは別に定める。

2 次に掲げる区間に限り、第157条第2項の規定により乗車中の場合は、前項に準じて当該区間について乗車券面の区間外であっても乗車することができる。
 (中略)
西小倉・小倉 間
吉塚・博多 間
城野・小倉 間

 今回は、上記のようなルートで移動する際に小倉や博多で途中下車する場合を取り扱います。この場合、この特例は適用されませんので、実際の乗車区間(西小倉→小倉→西小倉、吉塚→博多→吉塚)に対応した運賃を支払う必要があります。さらに同一線路とみるのか、別線路とみるのかというややこしい問題が生じます。

 

2 運賃はどうなるのか?

 ここは、新幹線と鹿児島本線が別線路と考える規定が関係するので複雑です。基準となるのは旅規の16条の3。

第 16 条の3 次の左欄に掲げる線区と当該右欄に掲げる線区に関し、第 26 条第1号ただし書、第2号ただし書及び第3号にそれぞれ規定する普通乗車券の発売、第 68 条第4項に規定する旅客運賃計算上の営業キロ等の計算方並びに第 242 条第2項に規定する区間変更の取扱いにおける旅客運賃・料金の通算方又は打切方については、前条第1項の規定を準用する。
山陽本線新下関・門司間及び鹿児島本線中門司・博多間
山陽本線(新幹線)中新下関・小倉間及び鹿児島本線(新幹線)中小倉・博多間

 ややこしいですが、分解するとこういうことです。

 以下に該当する場合は、旅客運賃・料金の通算方又は打切方については、前条第1項の規定を準用する(新幹線と並行在来線を同一線路とみなす)。

●第 26 条第1号ただし書→68条4項(環状線1周、復乗となる場合の打ち切り基準)

●第26条第2号ただし書→16条の3(新下関・博多間は別線であっても往復乗車券可)

●第26条第3号→連続乗車券の打ち切り基準

●第 68 条第4項→環状線1周、復乗となる場合の打ち切り基準

●第242 条第2項→68条4項(環状線1周、復乗となる場合の打ち切り基準)に該当する場合の区間変更の打ち切り基準

 つまり、16条の3を、一言でいうと、賃率だけ別線路とし、区間変更を含めた乗車券については同一線路とみなすということです。計算方法や乗車券の発行方法は同一線路と書かれていますが、賃率は同じとは書いてありません。だから賃率は、大原則にもどって別線路扱いです。

 

 となると、西小倉や吉塚を通過する在来線特急ならJR九州基準ですが、新幹線に乗るなら新幹線分はJR西日本基準となります。新幹線に西小倉駅吉塚駅はないので、往復ともJR西日本基準で計算する事例はありえません。

 上図のように新幹線上に仮想の西小倉と吉塚を想定して運賃計算をしますから、小倉や博多で途中下車した場合は、それぞれ170円+150円=320円を徴収することになります。現在、JRでは、新幹線を使う場合でも間違えて340円を徴収しているようなので、改善が求められます。車掌などが分岐往復乗車券(別線往復)を発売するのであれば、西小倉⇔小倉、吉塚⇔博多を320円で発行しないといけないのですが、たぶん車発機では出せないでしょうから、駅で精算になると思います。

 

www.estoppel.jp

www.estoppel.jp