【旅客営業取扱基準規程上の「鉄筆」】
前から気になっていたのは、この規定にある「鉄筆」です。
(乗車券類の文字の表示方)
第180条 乗車券類の使用文字は、次の各号に定めるところにより明らかに表示しなければならない。
(1) 表示事項は、印刷又は印章(日付印を含む。) によつて表示する場合を除き、証券用の黒色インキ使用のペン又は黒色のボールペンで記入する。ただし、次に掲げるものにあつては、それぞれの定めるところによつて記入することができる。
ア 車内用の乗車券類にあつては、青色インキ使用のペン又は青色若しくは赤色の色鉛筆
イ 定期乗車券の発着駅名にあつては、油性の黒色のフェルトペン
ウ 複写式のものにあつては、鉄筆
(2) 旅客鉄道会社の駅名は、旅客運賃・料金算出表の駅名欄(左欄)の例により、連絡会社線の駅名は、旅客連絡運輸取扱基準規程第6条別表により表示する。ただし、次に掲げるものにあつては、それぞれに定めるところにより取り扱うことができる。
ア 旧国名等を冠した駅名の旧国名等は、ひらがなで表示する。
イ 片道の営業キロが200km以内の乗車券類にあつては、所属線名の略号を省略する。
(3) ローマ字をもつて駅名を併記する場合は、修正ヘボン式による。
(4) 数字は、算用数字で表示する。
複写式の乗車券類は鉄筆を使ってもよいとあります。なんやねん鉄筆って?
ネットで検索すると、いまでもイラストや刺しゅうなどでトレースするときに使われるようですね。
【鉄筆で補充券を書いてみる】
ということで、とりあえず実践するための道具を用意しました。
● 複写式の補充券
本物はいっぱい持っているのですが、コレクションを痛めるわけにはいきませんので、おなじみの練習用(交通法規研究会刊)をつかいます。
● 鉄筆
鉄筆にはガリ版用の鉄筆と複写用の鉄筆があるようです。複写用の鉄筆を用意します。
こちらが複写用です。
次に挙げているガリ版用より先端が丸くなっています。
ガリ版用の鉄筆はこちらです。
先端はタングステンでできています。
● カーボン紙
このような両面にインクがついているものが必要です。
片面だけのものは利用できません。
では、書いてみましょう。
駅用の乙片です。カーボンからの色がかなり薄いので、書きづらいです。
甲片です。普通にきれいに出ています。
【実際のきっぷ】
実際に鉄筆を用いて書かれたきっぷを確認してみます。
昭和52年の小荷物切符が見つかりました。
表面にはかすかに「豊岡」とあります。
裏面はこんな感じ。裏側にカーボン紙のインクが着いていることがわかります。
これが別の小荷物切符ですが、1枚目が薄紙で2枚目が穴が開いた少し厚めの紙となっていて、間に両面式のカーボンを挟む仕様です。
【なぜ鉄筆なのか】
ボールペンが普及する前だからです。いまでこそ、2枚目が複写式になっていたり、1枚目がバックカーボンになっていたりしますので、1枚目の記入はボールペンで十分です。しかし、戦前の日本ではボールペンはほぼ使われてないので、複写式の伝票を記入するには両面式のカーボン紙が必要で、筆圧を確保するには鉄筆を使うしかなかったのです。だから基準規程にも鉄筆が登場するのです。
ボールペンの歴史は次のリンク通りです。
【骨筆】
本ブログはここで終わりません。骨筆です。
これも複写用として使われていたようですが、鉄筆ではないので、基準規程上は不可となりますね。
先端が骨でできています。
カーボン紙を入れてちゃんとかけましたよ。