旅と鉄道の美学

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【コラム】 車掌のお仕事を知る本

 小さいころから、鉄道は好きなのですが、運転士になりたいと思ったことは一度もないんですよね。車掌希望で、しかも新幹線には興味がない。なりたかったのは寝台特急と寝台急行の車掌です。仕事なのに旅行気分になれるし、いろいろなルートにも乗務できるので、新幹線や普通列車のようにワンパターンでもないし。

 

 そんなわけで、車掌の仕事について書かれた本は非常に少ないですが、この愛読書4冊を紹介しておきます。どれも著者の性格が良く表れていて面白いですよ。ただ、国鉄がベースなので、今のJRや私鉄の車掌のイメージとは違います。

 

 ●檀上完爾『赤い腕章』(鉄道図書刊行会、1977)

 

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 檀上氏はもともと国鉄職員で、駅員から車掌を経験しているので、当然のことながら正確な描写ですが、必ずしも専門家やマニア向けではないので、一般の方も楽しく読めると思います。車掌のあとは鉄道管理局の広報部署だったようです。

 

 すごく素朴な昔の国鉄が表れています。さまざま国鉄職員からヒアリングした小話で構成されており、車掌が出会ったおもしろ話が満載です。ただ、昭和30年代から40年代前半ぐらいの話が多く、4冊の中では、ちょっと隔世の感があります。

 この本は中学生のときぐらいに購入したと思いますが、当時、購入方法が分からず、著者に手紙を出してきいた覚えがあります。丁寧な返信をいただけました。当時の著者は自宅の住所を公開している方も多く、手紙のやりとりをした方が他にも何名かいます。

 

  鉄道図書刊行会は廃業していますが、別の出版社から復刻版がでています。

赤い腕章―昭和の国鉄車掌物語
 

 

 

  ●坂本衛『昭和の車掌さん乗務録』(宝島社、2014)

 

 

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 宝島社なので、ちょっとライトな気楽な読み物です。内容は著者の車掌時代をおもしろおかしく時系列にそって記述されています。

 特にところどころに入っている著者の写真が写真が印象的ですね。若い頃はちょっとふざけた感じで、専務車掌になりたてぐらいは間の抜けた感じ。車掌長時代の写真は貫禄がでていて、車掌長然としている。

 少し驚いたのが、のびのびシートの発案は坂本さんということ。国鉄時代に提案して報奨金をもらっているようなのです。もちろん坂本さん以外も提案者はあったと予測されますが、発想が柔軟ですよね。

 

 子供のころから私も思っていました。昼にフェリーみたいに雑魚寝列車があったら楽だろうなと。海外とかって、意外と昼にも寝台の運用があったりして快適なんですよね。本当に身体を水平にできると楽なんですよ。

昭和の車掌さん乗務録

昭和の車掌さん乗務録

  • 作者:坂本 衛
  • 発売日: 2014/05/09
  • メディア: 単行本
 

 

 

 ●坂本衛『昭和の車掌奮戦記』(交通新聞社、2009)

 

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 外観はまじめなのですが、内容は坂本節全開です。読んでいると、この人ほど趣味と仕事が完璧に一致した車掌もいないだろうと思います。苦労話も出てくるのですが、ぜったい楽しんでいるなってのがよくわかります。

 上の本とすこし内容がかぶります。 

 

 ●田中和夫『車掌の仕事』(北海道新聞社、2009)

 

 こちらは結構おかたい印象です。坂本さんが面白い恋人なら、田中さんは白い恋人ですね。大阪車掌区の車掌長と札幌車掌区の車掌長なので、良い対決です。この二人で座談会でも開いてほしかったです。

 内容は、実務的なことが多いので、裏話的なことより実際の実務上の運用がどうなっているのか知るには良い本です。どちらかといえばマニア受けの本ですね。

 なるにはブックスにもうすこし専門的な記述を加えた感じです。

 

車掌の仕事

車掌の仕事

  • 作者:田中 和夫
  • 発売日: 2009/10/01
  • メディア: 単行本