旅と鉄道の美学

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【コラム】 運転停車で乗り換えできるのか? 西村京太郎サスペンス・阿蘇殺人ルートを語る。

 「ばってん時刻ば見てください。急行はとまらんですよ。」という熊本県警捜査一課の刑事に対して、十津川警部と亀井刑事が運転停車について語りだします。西村京太郎サスペンスの阿蘇殺人ルート・北九州―熊本―秘湯由布院 急行火の山3号の女です。

 運転停車というのは旅客扱いをせずに鉄道会社側の都合で停車することの通称で、列車交換、運転士の交替、荷扱い(←その昔)、機関車付け替えなどで停車するものです。このトリックは、運転停車を利用して反対列車に乗り移ったというのがカギでした。豊肥本線の場合は単線なので、どちらかが運転停車をする必要があります。

 下の時刻表を見てください。豊後荻は上り下りとも「レ」と表記されていて、一見通過するように見えます。でも、単線で両方とも通過では変ですよね。こういうときは同じ方向に向かう同じ種類の列車の所要時間と見比べると、どちらが運転停車をするのか予測がつけられます。

 

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 では、十津川警部のように運転停車で反対方向の列車に乗り換えることは実際、可能なのか?これは、豊肥本線のような地方の路線なら可能だと思います。

 実際に飯田線では、乗り間違えた乗客が車掌に交渉して交換駅で乗務員室から降ろしてもらっていました。しかし、手続きにかなり時間を要したようで、車掌は15分ぐらいずっと無線で指令とやり取りしていました。

 また、種村直樹の著書では、寝台特急運転停車中に老婆が近くまで乗せてくれと車掌に交渉してきて、乗せてもらっていたという逸話が載っていましたし、檀上完爾の『赤い腕章』(で良かったと思う)では、貨物列車に病院まで行く客を乗せた話が出ていたと思います。後者の話は、途中で客が列車から振り落とされるというトンデモな話で終わっています。

 

 しかし、亀井刑事のように通過すべき列車をとめるということは、急病人などでないかぎり難しいのではなかろうかと思います。

 

 ということで、今日のキーワードは「運転停車」でした。特急列車に乗っているときに停車しても扉が開かなかったら、「運転停車か~」って中川家礼二風に車窓をにらみつけて言ってください(下記参照)。

 


中川家の寄席 005「となりのおっさん」

 

 

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 さて、運転停車といえば、懐かしい思い出があります。

 高校生のときに学校の行事で高山にスキーに行ったのですが、キハ58系の6両編成で飯田線から高山本線に団体列車で直行する企画だったので、各所で運転停車をしていました。飯田線にキハ58が入ってきたこと自体はわくわくする話ですがね。ちなみに昔は、長野から飯田まで来る急行「天竜」が、飯田線に入っていくる唯一の気動車でした。まあ私が生まれる前ぐらいの話ですけどね。

 で、その団体列車は、飯田線東海道線ではサクサク進むのですが、高山本線は普段のダイヤの間を縫っていくので、かなりの駅で交換や通過待ちで止められるのです。しかも10分などはざらでした。当時は特急「ひだ」に加えて、「北アルプス」、急行「たかやま」「のりくら」などもあり、JRになったといってもまだまだ豪華な時代ですからね。トータルで1時間ちかい運転停車があったとおもいます。そうなると、駅に行って入場券を買いたくて仕方がないのですが、あきらめました。まだ国鉄な雰囲気が残っていたので、車掌に交渉したら、ひょっとしたらおろしてくれたかもしれませんね。