旅と鉄道の美学

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【切符系】 間違ってキップにハサミを入れてしまった場合。キセルと誤入鋏のお話。

  最近ですと、出札業務と改札業務は合理化でごっちゃになっている駅が多いのですが、制度上は出札業務と改札業務は厳格に分かれています。しかし、むかしから田舎の駅は改札業務までやっている余裕がないので、窓口や券売機だけおいて「入鋏省略」と券面に記す乗車券が郊外の私鉄で散見されました。 

 

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  いまでも残っています。これは改札業務が厳格に行われていた時代の名残です。着駅や車内の検札で入鋏(改札鋏を入れること。もしくは入れた痕を意味する。実物は下記リンク参照)が入ってない場合は、不正乗車を疑います。正当に改札を通った記録がないので、その乗車券より遠い駅から乗車して中抜きをした疑いです。

 「キセル乗車」といわれるものですね。最近では、不正乗車一般をキセル乗車という用語法に代わってきていますが、本来はこれを意味します。

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 たとえば水戸駅東水戸駅までの乗車券を購入して、上記の乗車券をもって新鉾田駅で降りた場合に、乗車した記録(入鋏)がないので、キセル乗車を疑うわけです。典型的な不正乗車の形態です。乗車券に時間が入ったのもこれらの防止のためです。例えば、新鉾田から水戸にいくときに大洗でいったんおりて、水戸までの乗車券と一緒に新鉾田までの乗車券を購入した場合に時間が離れすぎていたりするからですね。

 行楽シーズンなどの帰りの長距離普通列車で一斉に特別検札が入るのはこれの防止です。大きな駅では券売機前で私服の鉄道警察隊員が張っていて、入場券や安い乗車券を購入した客を尾行して、降車した時点で鉄道営業法違反もしくは詐欺罪で検挙するという形をとります。最近はICカードが主流になってきており、検札自体が少なくなってきています。むしろ乗換用の中間改札を設ける形で防止しています。

 

  ちなみに、なぜキセルかというと、キセル(煙管)に形がにているからです。鉄道業界の俗語です。正式にはこの形の不正乗車を「中間無札」といいます。 

ja.wikipedia.org

 

www.estoppel.jp

 

 では、逆に誤って入鋏されてしまった場合は、どうなるのか。 

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  こうなります。普通に専用の訂正印で修正です。

 

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  往復乗車券を使用して2枚見せたら、帰りに押されてしまった時のものです。これによって入鋏の取消がなされるので、もちろん後で使えますし、払い戻しも可能です。

 

 最近だと、下記のような運用もしているようです。

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 これは可部駅から乗車して、広島駅で途中下車しようとした乗車券ですが、広島市内では途中下車できませんので、可部から広島までの運賃を一度支払って、改札外に出たものです。本来は運賃を支払って、広島の途中下車印を押すのが正しい方法なのですが、これは、使ってないことにしてしまっています。どちらも結果的には旅客には不利でないのですが、払い戻しや乗車変更ができてしまうので、不正利用されてしまいます。