旅と鉄道の美学

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【切符系】 令和時代。まだ残っていた硬券特急券にたまげた。(JR御殿場線・松田駅)

 令和なんとか的な言い回し。ミーハーちっくで苦手なんですが、思わず言ってしまう驚きでした。一部のマニアには分かると思います。

 

 硬券といえば、予算の関係で磁気券やICカード化できない地方鉄道で細々と残っていると思いきや、思わぬ場所にありました。もちろんマニアや観光客向けの硬券入場券なら、ちらほら都心の駅でも売っていると思いますが、なんら切符に興味のない一般旅客も購入するような硬券が神奈川県にあったのです。しかもIT先進会社である天下のJR東海小田急の間柄で。

 

 先日、こちらの記事で取り上げた乗換駅であるJR松田駅となります。

 

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 小田急新松田駅です。

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 新松田駅を左に見て、路地の奥を見るとJR松田駅の連絡口が見えます。

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 JR松田駅連絡口です。

 

 上空はこのような形になっています。左上から右下に走るのが御殿場線、右上から左下に走るのが小田急線、左上から右上にバイパスしているのが、特急「ふじさん」用の連絡線路です。したがってふじさんは新松田駅には入らずに松田駅に停車し、ここが小田急JR東海の分界点となります。

 

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 窓口をのぞいてびっくり。JRでは絶滅したと思われた乗車券箱が現役でつかわれとるやんけ~。今の時代、このように5本も硬券がはいっている乗車券箱を見ると血が騒ぎますね。昔は五本ごときかよ!って思っていましたがね。

  

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  これは廃止直前の北海道の上砂川駅の乗車券箱ですが、大きな箱にたった4本しかありません。貧相に見えますね。

 

 ここ松田駅JR東海では唯一の乗車券箱設置駅でしょう。このタイプは私が高校生ぐらいのときに、JR東海の駅に一斉にPOS端末といわれる発券機械がはいったタイミングで登場しました。入場券と主要な乗車券数種類を入れるために小さくなったタイプです。そのときは硬券の消滅が近いと直感し、急いで集めまくったものです。

 

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 こちらが発行された事例です。指定券の情報はJRの端末に入っているものの、発行区間小田急なので、料金収受は代理という形なのでしょう。金額欄が¥***となっており、いわゆる指ノミ券ですね。転記するのが面倒なので、マルス券も渡しているのでしょう。

 硬券の券面をみると席が「__番」になっていて、かつての特急「あさぎり」にあった小田急仕様なので、「ふじさん」の形態にするときに直し忘れていますね。

 

 

 ということで、あさぎり時代からJR・小田急直通列車の指定券を小田急で管理していることと、特急の停車駅が小田急(新松田)ではなくてJRの駅(松田)であるという物理的な稀有さが相まって残っているガラパゴスといえます。さらにJRであれば軟券でしょうけど、小田急なので昔のままの硬券をいまだに印刷しているのでしょう。まあ特急券なら自動改札にいれられるリスクも少ないですしね。硬券を自動改札に入れられて詰まると、取りだすのが本当につらいのです(駅員時代の実体験より)。これが首都圏で硬券が激減した主たる理由とききました。

  斜めの赤線もいいですよね。昭和30年代の国鉄みたいです。ちょっと残念なのが、活版ではなくてオフセット印刷になっていることです。券面上がフラットで味気ないです。

 なお、それぞれ、ふじさんの小田急停車駅(秦野・本厚木・相模大野・新百合ヶ丘・新宿)までの分がそろっています。

 

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 裏面も面白いですね。小田急特急券JR東海が受託販売していることがわかります。下記の記事では、JRの乗車券を他の店などで売る形態を紹介していますが、ここは逆のバージョンです。

 では、なぜ、JRのマルスで売らないか?ですが、次のことが予測されます。あくまで私の想像ですが、会社で営業部門と経理部門のソフトの連携プロジェクトに携わった経験からたぶんあたりだと思います。

 

 ① 販売形態が委託販売なので、特急券代が売り上げではなく、小田急から販売分の委託フィーを売り上げとして計上するという会計上の理由(客から収受した特急券代は預り金という理解)。JR⇔小田急連絡特急券とは、交互計算の処理方法が違うのだと思われます。道の駅の直売所で売っているような、農家が直接だした野菜と一緒の仕組みですね。

 ② 上記の理由から、極めてイレギュラーにもかかわらず、経理部分もいじらないといけないのでプログラムが複雑になり、コストが見合わない。つまり、松田駅の駅員が手作業で少し苦労すれば十分と考えている。

 

 

 

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 ここからは一昔まえのお話です。

 

 昔は下のようなD型硬券とよばれる特急券御殿場線には残っており、切符収集家の聖地でした。おそらくJRで最後に残ったD型サイズの硬券特急券です。このときはJR御殿場線の主要駅に小田急の端末が置かれていて、それを操作して予約をしたら、硬券に転記するような処理をしていました。当時の小田急の席番管理方法が全て数字で、JRと合わなかったことがマルスに入れにくい事情だったと予測できます。下の券面を見てください「566番」となっていますよね。

 実家を往復する際は、三島で新幹線を降りてわざわざ御殿場線をまわって、硬券特急券を買って東京にもどったものです。よく考えたら、この駅を訪れてからもう20年以上も経っていますね。

  

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 現在はJR東海マルスにも収納されているので、このタイプの特急券はありません。 

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  A型サイズ(券売機で出てくる近距離券と同じ)は同時期に伊豆箱根鉄道にありました。これは踊り子の最後まで残った硬券特急券です。発車時刻まで入った完全常備券といわれるもので、レア度は非常に高いです。いまは大型の軟券になっています。

 

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 これは急行あさぎり時代の急行券です。号車指定までしかありません。

 

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 ついでに松田駅の入場券です。購入した時間も必ず入れてもらっていたので、何時に訪問していたかもわかります。