3/14のJRダイヤ改正に伴う各種の制度改正についてはいろいろなできごとがあり、ネット上の報告をゆっくり確認していたところですが、最初に注目したのはこの件です。
0時になりました
— 綿貫渉 (@wataru_w) 2026年3月13日
券売機はまだ営業中なので、
運賃改定後の3月14日の日付発行で、
運賃改定前の価格である190円の切符が買えました
これで翌朝、都賀や物井に行けるのでしょうか pic.twitter.com/GGhNlvryYl
端的にいうと、3/14になったにもかかわらず、前日までの運賃制度で発行してしまった乗車券の扱いです。0時を過ぎて、手書きの補充券でこれをやれば誤発です。今回は券売機で発行されたものです。事実上、一斉に0時には作業できませんので、こういったことが起きることはおおむね想定されます。
わかりやすいように図示します。

上図の黄色部分です。ここは、本来は新運賃で発行しないといけない時間なのですが、券売機切り替えの都合上、旧運賃で発行されたのです。
なお、3/13発行の乗車券は終電後でも使えることは次のリンクの通りです。
今回のようなケースは十分に予想されていたようで、次のリンクにある通り、特例措置が通知されていました。
こんな掲示があった。想定済らしい。 https://t.co/vMlPm5B89g pic.twitter.com/vmu40T2P4c
— 東水快速 (@Tosuirapid) 2026年3月14日
本ブログはここで終わりません。この特例の背景を探りたいのです。特例がない場合、どのような考え方になるのかです。
【論点1】 金額式乗車券の性質
まず、金額式乗車券なので、不足分を支払わなければならないのではという疑問が浮かぶと思います。これは違います。金額式乗車券も着駅が指定された乗車券です。ただ、複数の駅に行けるという点が特別で、改札を入っても、旅客が降りる駅を選ぶことができます。上記の券だと、「都賀←四街道→物井」の矢印式乗車券とおなじです。
したがって、都賀に行きたいのであれば、それは「四街道→都賀」の乗車券となります。
【論点2】 旧運賃の乗車券の有効性
旅規には下記のような規定があります。
【旅客営業規則】
(契約の成立時期及び適用規定)
第5条
旅客の運送等の契約は、その成立について別段の意思表示があった場合を除き、旅客等が所定の運賃・料金を支払い、乗車券類等その契約に関する証票の交付を受けた時に成立する。
2
前項の規定によって契約の成立した時以後における取扱いは、別段の定めをしない限り、すべてその契約の成立した時の規定によるものとする。
これを読めばわかる通り、乗車券を購入したときの規則が適用となるので、3/13に購入していれば、3/14以降でも旧規則の適用となります。契約はお互いの意思が合致したときの合意内容で法律的な効果が出ますから、きっぷを購入したときの基準が原則です。
したがって、特例などは関係なく、3/13に発行された四街道→190円区間の乗車券で0時を過ぎても終列車までは問題なく使用できます。しかし、今回は、3/14なのに旧運賃。いわば誤発のような乗車券です。これはもう営業規則では考えることはできません。
本当は200円区間にしたいのに、190円で発行してしまったことと同じで、いわば表示の錯誤なので、民法まで遡ります。
(錯誤)
第九十五条 意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。
一 意思表示に対応する意思を欠く錯誤
二 表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤
2 前項第二号の規定による意思表示の取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる。
3 錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、次に掲げる場合を除き、第一項の規定による意思表示の取消しをすることができない。
一 相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき。
二 相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき。
4 第一項の規定による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。
これによると、JRとしては、3/14になったので、200円で売りたいのが真意です。しかし、券売機の設定が間に合わないので、やむをえず190円のまま乗車券を発行し、四街道→都賀または物井まで190円で乗せるという契約条件をのんでしまったわけです。
券売機の設定遅れ程度であれば、重過失には該当しそうにないので、3項による障害はなさそうです。
しかし、4項の要件があります。旅客が善意(事情を知らない)で無過失ならJRは錯誤による取消が主張できないのです。なので、まちがって190円の乗車券を出してますが、本当は200円ですとは言えないのです。
ただし、ちょっと小声ですが、綿貫氏に対しては言えるかもしれません。氏は鉄道の表裏を熟知した人物であるし、しかも今回は、このバグを狙って購入しているからです。JRは一般客には190円で乗せるけど、氏に対しては、悪意(裏事情知ってるでしょという意味)であると主張して10円の追加請求をすることができる可能性があります。
なお、3/14にもかかわらず、往復乗車券が発行された事例もあるそうです。これも、3/14の発行ですが、同様の事情により旧規則の適用になります。
3月13日で往復乗車券の発売は終了したと聞いていたのだが、14日でも買えたのは私の認識違い?
— かっちゃん、 (@katchan0809) 2026年3月13日
もしかして往復割引がなくなっただけで往復乗車券自体はなくならないってこと?
なんかよくわからん。 pic.twitter.com/Ov4982PhJ4