1 一般論としては釣銭の用意が必要
次の法律をご覧ください。
【日本銀行法】
(日本銀行券の発行)
第46条 日本銀行は、銀行券を発行する。
2 前項の規定により日本銀行が発行する銀行券(以下「日本銀行券」という。)は、法貨として無制限に通用する。
これは紙幣についての規定です。
貨幣は20枚を超えた場合は断ることが可能ですが(通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律7条)、紙幣での支払いは釣銭がなくても断ることができません。
さらに、鉄道営業法6条において、同条に明記された例外を除いて運送契約を拒否することはできませんので、客から1万円が差し出されてもきっぷを売る必要があります。釣りが用意できないのなら、後日、客の自宅まで持参するか、振り込みや現金書留で返金する必要がありそうに思えます(不当利得による返還)。
もちろん一般のお店では釣銭が出ませんとあらかじめ断っておけば大丈夫です。
2 鉄道の場合の例外
しかし、鉄道営業法に細部の規則を委任された鉄道運輸規程に次のようにあります。
【鉄道運輸規程】
鉄道ハ旅客ニ対シ運賃及料金ノ正算払ヲ請求スルコトヲ得
「正算払」です。お釣りがいらないようぴったり払うように要求できるということです。上記の鉄道営業法6条から鉄道会社に酷なので、運賃、料金ぐらいぴったり払うよう要求できるとしているわけです(ただし、法律ではないので、これをもって客を拘束できるのかは議論があるところです。)。
3 営業規則はどうなっているのか
【旅客営業規則】
(運賃・料金前払の原則)
第4条
旅客の運送等の契約の申込を行おうとする場合、旅客等は、現金をもって、所定の運賃・料金を提供するものとする。ただし、当社において特に認めた場合は、後払とすることができる。
4条は現金としかないですね。
(旅客運賃・料金の概算収受)
第75条
車内において旅客運賃・料金を収受する場合は、旅客運賃・料金の概算額を収受することがある。
2 前項の規定によって収受した概算額は、前途の駅において旅客の申出によって精算する。
75条にありました。「概算額を収受する」と書いてありますから、ドンピシャではなく、切りのいい金額をもらいますよと書かれています。これは前記の「正算払」できない場合に列車から降ろすわけにもいかないので、救済規定がおかれているわけです。うまくバランスをとっています。
車掌なので、駅のように十分な釣銭があるわけでもないから、とりあえず客から多めに取っておくことのできる規定を置いているわけです。
この規定はさらに事務取扱の下部規定が存在します。
【旅客営業取扱基準規程】
(概算額の収受方)
第113条 規則第75条の規定による旅客運賃及び料金の概算額の収受は、精算額による取扱いのできない場合等やむをえない場合に限り、行うものとする。
2 前項の規定により収受する概算額は、旅客運賃及び料金額(見積額を含む。)を超える額を収受するよう努め、前途の駅において精算する旨を案内するようにしなければならない。
(注)概算額は、旅客運賃及び料金額を著しく超えないように注意しなければならない。
このようにいったん概算額で徴収して、都合の良い駅でお釣りをもらってくれというわけです。もともと「正算払」が原則なので、客が手間をかけることになっても仕方がないですね。
こちらは昔の入鋏式の車内補充券です。


このように概算とあります。ここに穴をあけることで概算収受を意味することになります。
車発機の事例は持ち合わせてないので、リンクを貼っておきます。
概算収受の車補
— Dai🍆🎼🥞🍳 (@Daitetsuticket) 2024年5月13日
現物初めて手にした… pic.twitter.com/2SzAs1OoBT