旅と鉄道の美学

鉄道を中心とした国内外の旅と切符など。リンクフリーです。

【営業規則系】 七尾線 七尾・和倉温泉間の怪

 七尾線の終端部ですが、不思議だと思いませんか。

 時刻表の路線図を見る限り、七尾・和倉温泉間はJR西日本七尾線です。

 

 しかし、列車を見ると、金沢からくる普通列車は七尾どまりで、その先はすべて「のと鉄道」の列車が走っています。他方で、特急「能登かがり火」は和倉温泉まで走っています。そのからくりは下図のとおりです。

 線路の所有権はJR西日本で、JR西日本は自分の線路で特急を走らせているだけです(第1種鉄道事業)。のと鉄道JR西日本に線路を借りて旅客営業をしていることになります(第2種鉄道事業)。だから、七尾・和倉温泉間はダブりで旅客営業が行われていることになります。

 ※この区分は鉄道事業法2条によります。

 

 では、現場はどうなっているのでしょうか。行ってみました。

 

 【JR西日本 七尾駅

 まずは七尾駅です。

 

 こちらはJRの改札口

 なんと運賃表に和倉温泉が載っていません。

 しかし、券売機を確認すると、出てきました。

 購入してみました。JR西日本の七尾→和倉温泉の乗車券です。なお、規則上は、これで「のと鉄道」の列車には乗れませんが、金額が同じということもあって、現場では許しているようです。時間があれば、誤購入として無手数料払い戻し処理をするのだと思います。

 

 券売機の近くにこのようなテプラが貼ってありました。

 

 【のと鉄道 七尾駅

 JR改札の右にのと鉄道の出札と改札があります。ホームでは両方につながっているので、混浴の風呂に行くような感じになってます。大鰐温泉駅などと同じですね。

 運賃表です。和倉温泉まで190円とあります。

 

 券売機を確認してみました。

 購入した乗車券です。こちらも同様にJRの特急に乗ることはできませんが、現場では運用上、認めているとのことでした。普通はいないでしょうけどね。

 

 【和倉温泉駅

 次は和倉温泉駅です。

 運賃表にも載っています。

 両方の券売機で乗車券を購入してみます。

 

 もちろんJRの乗車券しか購入できません。

 のと鉄道に乗る場合は車内で精算するようにという案内がありました。

 

 それでは以上の点につき、規則を確認してみます。

のと鉄道 旅客営業規則】

19条4号
 連絡運輸の発売区域は、次の範囲とする。……別表第2号による。

 

別表2号(第19条4号)

1.連絡運輸の発売区域は次の範囲とする

(1)普通旅客
 ア.次の旅客会社線の各駅と、のと鉄道線の各駅相互間
 旅客会社線 西日本旅客会社線 北陸線 七尾線各駅
   ⇔のと鉄道線 各駅

(注)七尾発又は着となる連絡運輸の乗車券は発売しない
  接続駅・・・・・七尾線 和倉温泉
  乗車券の種類・・・片道・往復・連続乗車券、団体乗車券、通勤・通学定期乗車券

別表第3の1号(第51条第3号)

1.七尾・和倉温泉間の片道普通旅客運賃

 大人 190円
 小児 90円

 「七尾発又は着となる連絡運輸の乗車券は発売しない」という文言はJRの旅客連絡運輸規則別表にも明記されていました。今回の取り扱いの経緯がわかりそうな一文です。これは、七尾←(JR)→和倉温泉←(のと)→穴水といった乗車券を発売しないということです。なので、七尾から和倉温泉までJRの特急に乗って、和倉温泉から穴水までのと鉄道の列車に乗る場合、乗車券は和倉温泉まで購入して、その先は打ち切り計算で精算となるのが正式です。

 今一つは、七尾・和倉温泉間の特定運賃です。のと鉄道の運賃基準からするとこの金額にはならないので、JRに合わせています。

 このあたりの規定から、共同運行区間でかつ、運送契約も別であることがわかります。同様の形態は伯備線の総社・清音間で見ることができます。ここはJRに乗る場合は、JRの乗車券、井原鉄道の列車に乗る場合は井原鉄道の乗車券が必要です。

www.estoppel.jp

www.estoppel.jp

www.estoppel.jp

www.estoppel.jp