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【営業規則系】 災害時の旅行の中断 無料で戻る策(無賃送還制度の概要)

 今回は無賃送還制度を取り上げます。簡単に言うと、その先をあきらめて発駅まで戻ることができる制度ですが、別に発駅まで律儀に戻らくなくても、途中まで戻ることもできます。その後、残りの区間を払い戻せます。

 先に言っておきますが、勝手にやってはいけませんよ。きちんと申告して、証明をもらってから行ってください。「事故返」と乗車券面に記入されるか、業務連絡書をもらえます。

 1 基本的な考え方

 運送契約というのは、●から▲まで運ぶという債務なので、不通でもって予定していた旅を完遂できないということは債務不履行になり、契約が解除できます。発駅まで戻る場合は全部解除、途中まで戻る場合は一部解除ですね。そして、解除後は原状回復義務を負うため、JRは旅客に運賃を払い戻すという構造です。法的論理を語ればこんな話です。

 

 では、いろいろと気になる問題点に分けて検討していきます。

 

 2 無賃送還が可能な事由

 (1)列車が運行不能となった場合。

 (2)列車が運行時刻より遅延し、そのため接続駅で接続予定の列車の出発時刻から1時間以上にわたって目的地に出発する列車等の接続を欠いたとき。

 私の最近遭遇した事例をあげます。長門市から下関に向かっている列車が遅れて、小串駅1分接続がなされずに1時間6分後の列車に乗る羽目になりましたが、このような事例が好例です。

 これは接続を欠くことが確実なときを含むとあります。なので、今回遭遇した事案でいうと、長門市を出発する時点で15分近く遅れていたので、すでに接続を欠くことが確実視されていたので、無賃送還の対象となります。

 (3)着駅に2時間以上の遅延(遅延することが確実なときを含む)。

 乗車している最中に遅れが重なって2時間以上の延着が確実視されるなら、その時点で途中駅であきらめて無賃送還を受けることができるということです。

 

 3 無賃送還時の列車や経路は自由に選べるのか?

 「最近の列車」(284条1項1号)とあるので、あまり好き勝手には選べません。たとえば、最近の列車だと途中駅までしか行かないとか、途中駅で終電を迎えることになり、そこはホテルがないような駅であるなどといった理由があれば、遅く出発することが可能でしょう。交渉すれば、ホテルでゆっくりしてから翌日出発するぐらいのことは認められるかもしれません。

 なお、特急に乗って戻る場合は特急券が必要ですが、もともと特急に乗ってきた方は特急で戻ることができる可能性があります(駅の裁量です。)。 

 

 経路については、通ってきたルートが基本ですが、「やむを得ない事由」によって乗車券に表示されているルートでもどれないときは、別ルートを認めてもらえる余地があります。ここは交渉が必要ですが、元の乗車券があまりにも迂回したルートや本数が少ない路線なら、最短経路や別経路で戻れるように交渉する意味はありそうです。

 

 2 無賃送還時は途中下車できるのか?

 できません。

 それはそうですよね。最終的に払い戻すのに、途中下車で遊んでもらっては困るわけです。なお、途中で列車が終わってしまってホテルに泊まる場合は駅を出ることができます。これは設備上の都合による一時出場です。

 3 これまで途中下車していた場合はどうか

 無賃送還自体は途中下車をしていても関係ありません。発駅まで戻ることが可能です。ただし、払い戻しは最後に途中下車した駅から先の区間になります。

 

 4 途中まで戻ってから再開できるのか?

 終日運休と思ったら、運転再開したので、無賃送還を途中でとりやめて旅を再開する場合です。実際に私が芸備線でとった方法です。

 規則上は判然としませんが、認められるでしょう。無賃送還自体は不通や遅れの場合の代替手段として置かれていることから、代替手段を放棄したら、もとの旅が再開できると考えていいと思います。これは無賃送還時に途中下車ができないというデメリットからも認められると想起されます。

 現場ではこの部分の判断が一番難しいでしょう。

 

 5 再開後にまた同じ区間をのるときに途中下車できるのか?

 すでに途中下車している駅以降はできると考えていいと思います。途中下車がおわっている駅までは運送契約が履行されているので、途中下車ができる理論的根拠が欠けます。

 

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