旅と鉄道の美学

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【コラム】 列車における一番安全な場所はどこか?

 小田急に引き続き京王でも悲惨な事件が起きてしまいました。都内の鉄道会社に勤務していた身としては考えさせられる事案です。

 

 そこで、多少なりとも鉄道に詳しい者として、緊急事態への対応がしやすいという側面から安全な場所を考えてみたいと思います。

 

 1 衝突事故に備える

 いまでこそ少ないですが、昔の国鉄では衝突事故が多発していました。まだ保安設備が十分でなかったからです。

 JRでは飯田線北殿駅の正面衝突事故が地元民としては印象深いですね。悲惨な事故としては、信楽高原鉄道事故とJR西日本の尼崎脱線事故が挙げられます。どちらも先頭車両から順に悲惨なことになっています。

 土砂崩れに乗り上げて脱線転覆ということもありえます。

 最近では、京急のトラックとの接触事故がありますし、山間部の路線の場合は倒木が車内に飛び込んでくることも考えられます。まれな例では、人身事故で運転室を突き抜けてくる場合もあり得ます。

 

 これらで悲惨な目に合わないようにするには、極力後ろの車両に乗るという方法になります。尼崎脱線事故では4両目まで脱線していますので、4両目でも十分とは言えないわけです。また人身事故では、目撃した方がPTSDになってしまったなどの問題もあるわけです。

 

 逆に、追突事故の側面から見ると、最後部も安全ではないという意見もあろうかと思いますが、いまはあまり問題はないと思います。戦前や戦後すぐなら、保安設備が未熟なことから追突事故もあり得ましたが、いまはよっぽど大丈夫だと思います。

 

 ちなみに、乗りごこちという視点では中間車両です。うしろに行くと、揺れやすいんですよ。乗り降りのしやすさなどもあって、グリーン車は中間にあるわけですね。国鉄時代からの伝統は、真ん中にグリーン車を配置して、その列車の一番の上席である「車掌長」がその車両に乗務して、丁重におもてなしするというスタイルです。ただし、最近では通り抜け防止の観点からグリーン車を両端にかためてあったりもしますね。

 

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2 防犯性の高さから考える 

 いろいろな意味から、圧倒的に最後部車両の車掌の近くです。運転士は運転に集中していますが、車掌は車内をいつも見ていますから、チカンやスリには車掌の近くでは遭いにくいのです。

 それにことがおきたときも容易に通報しやすいですしね。

 チカンが少ない車両に関しては、男性もメリットがありますよね。自分の近くで実際にチカンがおきた場合、冤罪事件の犯人にされるリスクもあるので、少ないに越したことはありません。

 今一つは、あえて防犯カメラに写りやすい場所にいるようにすることです。カメラに写りやすい場所はそもそも防犯性が高いうえに、犯罪にあったり、冤罪の場合にカメラの画像が移植を発揮するからです。

 

3 情報収集の高さから考える

 わたしは列車で異変がおきたときは乗務員室の近くに行きます。というか、だいたい近くにいますけどね。そうすると、指令や駅とやり取りしている無線の情報や乗務員間の会話を耳にしますので、他の人より多くの情報が早く手に入りますし、必要なら質問もします(邪魔をしてはだめですよ)。

 あまり近づいて盗み聞きするのはよろしくないのですが、結構な音量なので、乗務員室の前にいると普通に聞き取れます。

 

 例えば、災害で列車が遅れているとしても、他路線の詳しい情報をその列車の車掌がかならずしも放送してくれるとは限りません。しかし乗務員室から漏れ聞こえてくる情報を総合すると、他の路線の運行状況がわかって、振替乗車で行くべきかなどの策を早めに練ることができるのです。

 あるいは、逐一流れてくる事故の状況報告から開通の見通しを立てたりします。

 

 特に乗務員室などにJR社員だけが受信できる一斉放送(旅客一斉指令)がありますから、これを聞くとタイムリーに情報が手入ります。一部はアナログなので、ホームセンターなどで売っている受信機できくことが可能です。

 

 ちょっとゲスな姿勢ですが、こういった情報をずっと耳にしていると、災害中継を聞いているみたいになるので、意外とイライラしません。むしろ頑張っている社員さんを見守ってあげようという気持ちになります。

 

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4 避難の容易さから考える

 これは特に地下や鉄橋などを考えると圧倒的に最前部と最後部です。列車の運転室をのぞいてみるとわかると思いますが、タラップが備え付けてあります。これは、貫通扉(運転室の前面ドア)をあけて列車から脱出する際に利用します。地下鉄の場合は、ここからの避難が原則なので、貫通扉のない車両はないと思います。

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 で、当然のことながら、避難の際は近い人からしていくので、早く車外に出られるということです。

 韓国であったような地下鉄火災が起きた場合などは、1分1秒を争いますから、やはり貫通扉に近い車両の方が助かりやすいわけです。

 

5 非常ブレーキに備える

 混雑した列車で非常ブレーキがかかると、転倒リスクがあります。これを防止するには進行方向に壁がある所に立てばいいのです。動き出す瞬間は覚悟していますが、非常ブレーキは突然かかるので、急な対処は難しいからです。最近は非常ブレーキがかかる際に自動放送が流れる車両もありますね。

 

6 結論

 最後部の車掌の目の前に壁を背にして立つ。壁を背にするのはゴルゴ13と同じです。襲われるようなことはあまりないと思いますが、カバンが当たったり、スーツケースが転がってきたりなどしたときに対処しやすいようにですね。

 夜の列車だと、酔っ払いに背後からゲロをかけられないようにするためでもあります。

 

7 補論1(ハンマー常備?)

 固定窓の車両はハンマーが必要なのかも。確か台湾の新幹線は日本製ですが、ヨーロッパの仕様にならって窓を破壊するハンマーが常備されたはずです。

 日本でも寝台車は火災時の避難のためにガラスを割るためのハンマーが常備されていました。なんせ寝たばこが多いので、火災のリスクが高かったからです。

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 いまでも寝台車両が保存されている博物館にいけば見ることができるでしょう。

 しばらくまえに夏の暑い時期に駅間で列車がとまってしまって、熱中症になってしまうような事案があったと思いますが、どうしようもない場合は、ハンマーを使ってガラスを割るという方法もあり得たかもしれません。たとえば、通常時は分からないようにし、非常時は座席の下から出せるようにして置いて、車掌の放送でもってハンマーのありかを案内して、何枚かガラスを割ってもらうなどの方法ですね。

 

 もちろん窓を人が逃げ出せるぐらいの幅は開くようにしてあるのが望ましいのですが、完全なる固定窓の車両は、ハンマーをこっそり常備してもいいのではないかと思います。あるいは乗務員室ぐらいには常備して、最悪、車掌が車内を回ってガラスを割ればいいのです。

 

 8 補論2(ホームは半身で立つ)

 駅ホームに立つときですが、基本的に線路に対して、利き足を前にだして半身の姿勢で立ってください。不意に後ろから押されても、並行に立っているより支えが効きます。別に誰かに故意に押されるというわけではなく、後ろを人が通ったり、後ろの人が倒れ掛かったりした場合にバランスを崩して、触車事故にあいにくくするためです。

 私は駅員時代の癖でいまでもホームで立つときは必ず半身ですね。一番最初に助役に指導されました。

 こち亀でいうと、ボルボ西郷がデートをする際に、待ち合わせ場所で彼女を待っているスタイルです。

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