都会ではすっかり見なくなった日付印字器です。関東圏では総武流山電鉄か相模鉄道、江ノ島電鉄ぐらいじゃないでしょうか。平成30年になったところで、最初の「3」が表示できずに使用をやめた鉄道会社もあるようです。詳しくは下記参照。
明治や大正時代は別の機種があったようですが、日本における主流は下の写真のように2種になります。菅沼の方が歴史が古く、廃版も早かったようです。天虎工業の方があとです。現在、天虎工業は休業されているようですが、日付印字器のライセンスは硬券印刷で有名な関東交通印刷で引き継いでいるようです。
リンク⇒ 関東交通印刷:取扱商品
さて、表示されている「DATING MACHINE」の俗称をダッチング・マシーンと言いますが、英語読みだと「ディティング・マシーン」が正解ですよね。どこかで訛ったものではないかと言われていますが、私見としては、ドイツ語よみ「Dutum」(ダートゥム)のダーに流されて訛ったんじゃないかとも思うんですがね。単なる個人的な推測です。
なお、海外においては、後で出てくる奥に押すタイプが主流で、日本型の物は韓国と台湾で見ることができました。いまでも台湾で硬券が売られている観光地の駅では使われているようです。
それでは2種の違いに入っていきます。
【菅沼タイプライター製】
北陸本線の余呉駅で使用されていた菅沼タイプライター製のものです。こちらが戦前、戦後の主流です。高校生のときに琵琶湖近辺在住の方から譲ってもらいました。
内部はこうなっています。上下ではさんで印字します。
中にレバーがついており、これで日付の最後に「ヨ」がつきます。どうも売上日を発行日ではなく、翌日扱いにするという意味のようです。日付は0時をすぎないと、規則上、動かせないので、ヨをつけて売上計上日を変えるということですよね。
【天虎工業製】
昭和40年代以降に登場している機種です。菅沼からライセンスが譲渡されたようなことがネット上には書かれています。真偽は定かではありません。
飯田線の浦川駅の物です。 佐久間レールパークで部品即売会があったので、購入したものです。すでに50年代と60年代しか印字できず、まったく実用性がありません。
内部はこんな感じです。下部の回転するところが菅沼式との違いです。
こちらは日付を変更する金具です。左が天虎、右が菅沼用です。
では、印字の違いをみてみましょう。同じ本長篠駅の乗車券ですが、上段が菅沼で、下段が天虎です。
上の菅沼の方が、ちょっと斜めっていて大正の空気感が出ていますね。下の天虎の方は落ち着いた感じです。
印字の流れが分かるように撮影しました。
活字は左に寄っており、特記の部分に硬券が当たって一緒に動きます。
硬券が下部のローラーとの間に挟まれて印字されます。
そして活字部分は上に移動するので硬券を引き抜けます。
せっかくなので、動画も用意しました。
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本ブログはここで終わりません。キップマニアは疑問を感じるでしょう。C型乗車券はどうするのか?
こうなります。
連続乗車券の1枚目(甲の1)はひっくり返すしかありません。
往復乗車券のかえり券は左端に来ます。
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最後に海外編です。
これがいちばんはっきりと写っている物です。ギリシャのテッサロニキ駅にあった使われてない日付印字器です。カウンターに取り付けてあるので、オブジェとして残しているのでしょう。
私の今まで行った国で、いまでも硬券が主流の国はスリランカで、日付印字器も使われています。