旅と鉄道の美学

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【切符系】 キップの硬さ。〔硬券〕〔半硬券〕〔軟券〕の違い。

 知っているようで知らないキップの形状による用語の違いです。ICチケット全盛の時代に何を語っているんだと言われそうですが、懐古趣味と思って読んでください。

 まだまだ地方の鉄道では売っていますので、このような言い方を覚えておくと、旅に出たときにドヤ顔できますYO。

 

 最近はニュースなどでも、「硬券」という言い方がされるようになり、随分と一般的な用語になってきていますが、そもそもは鉄道用語ですらなく、マニア間の通称でした。もともと日本の鉄道のキップ(専門用語では「乗車券類」と表現します。)は、硬券が主流で、厚さによる識別は特に意味を持っていませんでした。

 主に戦後ですが、クーポン型の乗車券や券売機券が登場したときに、形状に重きを置いていたマニアが、このように言い出したのだと思います(私の予測です)。少なくとも国鉄の駅員の間でも普及していた言い方ではありませんでした。この点は複数の国鉄職員との会話で確認しているのである程度正しいと思います。昭和50年代後半に硬券入場券くださいと言ったら、「コウケン?」と首をかしげる国鉄の駅員さんが結構いました。

 その後、1990年代になって、JRから硬券が減りだしたときに記念用として硬券が注目されるようになり、鉄道会社側も「硬券」の存在価値に着目しだしたのです。「硬券」という言い方が鉄道業界に普及したのはこの時期でしょう。  

 

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 このようにJR版の営業規則にも一部で登場しています。

 

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 こちらは硬券の価値に着目した記念入場券です。観光地や廃止記念、記念乗車証などで登場してきました。私も最初は物珍しさで集めていましたが、途中で飽きてしまいました。

 

 さて、そのような硬券が一気に減ったのは1990年前半ぐらいで、指定券の発売できるマルスではなく、POSといわれる収入管理システムを兼ねた発券機械が導入されたときです。このときは全国のJRの駅から大きな乗車券箱(下記参照)がどんどん消えていきました。 すごい勢いでした。

 PC-98DOS-Vが拮抗していた時代で、大手企業に本支店間のネットワーク設備が出だしたころなので、JRも、みどりの窓口とは別に安価なネットワークが組めるようになったのでしょう。

 ちなみにマルスよりPOSの方がコストが低いらしいですね。JR九州の某駅の出札口に両方機械が並んでいて、「コストを意識!POSで発券できる場合はマルスで発券しないこと」といったようなテプラがはってありました。涙ぐましい努力です。

 

 もっとも、硬券が一気に減り始めた時期には、機械だと発券にかえって手間がかかる近距離乗車券と記念向けの入場券は若干残っており、小型の乗車券箱が登場しています。この券箱はかろうじて御殿場線松田駅で現在も現役です。 

 

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 では、各論に入っていきます。 

 

 (1) 硬券 

 まずは、皆様ご存知の硬券から。でも、若い人は知らない人が多いのかな。

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 大量にもっていますが、私が人生で初めて手に入れた硬券でも挙げておきます。親戚のおばあちゃんからの頂き物です。最初はもっときれいだったのですが、小学生の時はきちんとアルバムには保管してなかったので、汚れています。黒いのは筆ペンの墨ですね。いまでもインクを落とした時のショックは思い出せます。

 ちなみにこのサイズは、世界の乗車券の嚆矢であるエドモンソン式(イギリスのエドモンソンさんが考えた。)の大きさです。現在では、自動券売機ででてくる乗車券と同じサイズでA型にあたります。

  そのほかにはB型、C型、D型などがありますが詳しい解説は下記に譲ります。

www.ticket-print.co.jp

  

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 これがB型です。国鉄やJRだと、主として100キロ以内や近郊区間だけの途中下車ができない乗車券に用いられていました。入場券か硬券を扱っている地方私鉄で見るぐらいでしょう。

 

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 これがC型です。準常備往復乗車券などで使われていたサイズですが、使いづらいので、発行例はすくなかったようです。

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 同じくC型で、国鉄時代は連続乗車券に用いられていました。 

 

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 これがD型です。特急券が典型的な用途ですが、このように記念券にも使われました。乗車してないのですが、糸田駅の入場券を郵送で頼んだら、一緒に入ってました。

  

 

  (2) 半硬券

 マニアでもこの名称は知らない人が多いと思います。かなりの俗称にあたります。主に地方の私鉄で登場したもので、硬券のコストをかけるほどでもないような券に用いられていました。回数券のように連綴にして印刷した上で、発売するときに1枚ずつやぶって発売するものです。

 たまに券売機券を半硬券という方がいますが、歴史的には違います。

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 これは豊橋鉄道渥美線にのったときに杉山駅前の雑貨屋さんで購入したものです。よく見ると日付印字器できちんと日付が入れられています。 昭和63年です。

 

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  こちらが裏面です。薄めのボール紙といったところですね。

 

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  硬券と厚さを比べてみました。半分ぐらいですかね。

 

 (3) 軟券

   もともと軟券というのは、券売機券が登場したときの言い方ですが、いまでは補充券やクーポン型を含めての言い方のようにも思います。この中で、ローカル線の簡易委託駅などで売られていたペラペラの乗車券は、訪問したときのガッカリ感満載で「ペラ券」などとも言われました。

  

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  こちらが今でもお馴染みの感熱方式の券売機券です。 ちなみにこの駅は2カ月間しか営業していません。

 

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  ペラ券はこんな感じです。地元の自治体への委託駅や駅前の雑貨屋で売っていたりする券です。いまでは、こんな券ですら、機械発券でないというだけで価値が認められていますから時代は変わったものです。私が小学生の時は、はるばる遠くの駅まで行って、この乗車券だとがっくしきて、疲労感が倍増したものです。