旅と鉄道の美学

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【営業規則系】 JRの特急が半額になる乗継割引の活用法(総まとめ)

 (前注)

 サンライズ瀬戸と四国の特急券を一緒に購入する場合の乗り継ぎ割引制度は、2023年4月1日から廃止になりました。

 乗継割引制度は2024年3月15日乗車分で廃止となります。

 

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 タイトルに特急って書きましたけど、急行もいけるんで、急行「飯田線秘境駅号」に新幹線から乗り換えるときなどにも活用してください。

 いまでは特急券が大きな顔をしていますけど、制度上は急行券が主役で、特急券特別急行券という脇役なんですよ。

 

 

 1 乗継割引とは

 単純にいうと、新幹線やサンライズと特急を乗り継ぐときは、新幹線やサンライズではない方の特急券が半額になるということです。

  この制度の起源は昭和36年の結合特急料金制度です。青函連絡船を挟んで本州の特急と北海道の特急列車を1本とみなして、少し高めですが、2枚をバラで買うより安いという形でした。

 その後、昭和40年から新幹線に客を誘導するための策として現在の制度が開始されて、翌年には本州と北海道、四国の乗継制度も開始されました。

  大まかには、新幹線を積極的に利用してもらうことと、連絡船によって分断された場合に特急料金が高額にならないようにするための配慮ですね。連絡船廃止後もサンライズ瀬戸は新幹線の代替と考えて残されているのでしょう。 

 

  こちらが硬券の事例です。

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 上が急行券、下が特急券です。売れ筋路線には専用券がありました。

 

 2 新幹線と乗継割引

  現在の制度についてポイントだけ解説します。知らぬ間に複雑になっていました。

 

 ●東海道・山陽新幹線は、新横浜と新下関間の駅で乗り換える場合に適用される。

 新大阪と大阪を使って乗り換える場合は適用されます。 同じように岡山と坂出、岡山と高松で乗り換える場合も適用されます。

  ⇒東京、小倉、博多が外れていますのでご注意。

  ⇒新大阪や岡山で乗り換えるときは分けて買わないように注意が必要です。

  ⇒2022.1.13 追記

  踊り子、サフィール踊り子、湘南は適用外となっています。

 ●東北新幹線新青森駅のみで適用される。

 ●上越新幹線は、長岡と新潟のみ適用される。

 ●北陸新幹線は、長野、金沢と上越妙高のみで適用される。

 金沢は、津幡を通る特急列車で、津幡以遠の特急料金に適用される。

  ⇒IRいしかわ鉄道は割引きにならず。

 上越妙高直江津を通る特急列車で、直江津以遠の特急料金に適用される。

  ⇒えちごトキメキ鉄道は割引きにならず。

 ●北海道新幹線新青森駅新函館北斗のみ適用される。

 ●九州新幹線は適用されない。

 ●新幹線から在来線の場合は当日乗換でないと適用されない。

  ⇒静岡(下り)や大阪(上り)でサンライズに乗り換える場合は、0時を過ぎていますので無理ですね。熱海(下り)か姫路(上り)で乗り換える必要があります。

 ●在来線から新幹線の場合は、翌日乗り換えでも適用される。

  ⇒乗換駅で1泊できますね。もともと夜行列車に乗ってきた客が翌朝に新幹線に乗り換えることが想定されています。 

 

  

 3 サンライズ瀬戸と乗継割引

 むかしは寝台特急瀬戸であった制度ですが、現在、サンライズ瀬戸との乗継割引が残されています。高松か坂出でサンライズとJR四国の特急を、先行列車を基準として当日か翌日乗り継ぐとJR四国の特急料金が割引になります。

 

 4 サンライズとJR四国特急ダブル割(ダブル割はもうできません)

 上記の2と3を合体させると面白いことがおきます。

 たとえば、新横浜から松山に行く場合です。

 

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 横浜まで出てサンライズに乗るのも手間ですよね。熱海まで新幹線で行くとダブル割になります。

 新横浜⇒熱海 自由席特急券 990円

 熱海⇒坂出 特急券 3830÷2=1910円(10円未満切捨)

 坂出⇒松山 特急券 2950÷2=1470円(10円未満切捨)

 

 

 5 乗継割引と途中下車

 乗継というと改札を出られないと思いがちですが、これは関係ありません。乗車券に「下車前途無効」となければ、乗り継ぎ駅で途中下車は可能です。

 特急の途中駅ではどうなのか。可能ですが、そのとき使用している特急券はそこで無効となります。後続の特急に乗るのであれば、新たにその区間特急券を購入することが必要ですし、普通で移動するのであれば、追加費用は必要ありません。その後、乗継分の特急券を乗り継ぎ駅から使用することができます。

 

 

 6 乗継割引と選択乗車

 新幹線と並行している在来線の場合は駅が離れていても選択して乗車できる制度があります。 

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 例えば京都⇒高山の乗車券で岐阜羽島で新幹線を降りて、名鉄で岐阜に移動して高山線に乗車することが可能ですが、この場合にひだの特急券が割引きになるかですが、これはできません。乗車券で可能な事でも、特急券には適用されないので、バラバラに買うしかないのです。

 このパターンで乗継割引を適用するには名古屋で乗りえるのがいいでしょう。

 

 あるいは1日1本ある大阪発のひだ25号を利用する場合は、米原まで新幹線を使うと一番安くなります。

 ① 京都⇒(ひだ)⇒高山 通常期 2950円

 ② 京都⇒(新幹線自由席)⇒名古屋⇒(ひだ)⇒高山 通常期 3890円

 ③ 京都⇒(新幹線自由席)⇒米原⇒(ひだ)⇒高山 通常期 2350円

   

 

 7 裏技編

 (1) 新幹線の特急券を分ける方法

 出雲市から金沢に行く場合を考えてみましょう。

  ①出雲市⇒(やくも)⇒岡山

  ②岡山⇒(新幹線)⇒京都

  ③新大阪⇒(サンダーバード)⇒金沢

 3枚で購入すると、一般的には高い方を乗割にします。

  ①特急券(通常期)2950円

  ②自由席特急券(のぞみ) 3400円

  ③特急券(通常期)2950円

 ①と③が同じですね。どちらかを半額にして、計7820円です。

 

 これをちょっと買い方を替えてみます。新幹線の特急券を新大阪で切って、①と④の両方に乗割を利かせるのです。

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  ①出雲市⇒岡山 特急券 2950÷2=1470(10円未満切捨)

  ②岡山⇒新大阪 自由席特急券(のぞみ) 2530

  ③新大阪⇒京都 自由席特急券(のぞみ) 870

  ④京都⇒金沢 特急券 2950÷2=1470(10円未満切捨)

合計すると6340円となり、1480円も浮きます。あと20円で、憧れのハローキティ―新幹線弁当が食べられます。

  これをやる時のポイントは新幹線接続駅から直近の駅で切るのがベストです。新幹線の1区間は特定料金になっていることが多く激安なので、乗割用の特急券に使うにはコスパがいいのです。

 

 

 (2) 往復で利用する方法

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 東京から熱海を往復する場合に、帰りを新幹線にすると、往路が半額にできますね。乗継自体は片道に限っていませんので、こういった利用が可能となります。先に踊り子を利用すれば、熱海で1泊できますね。

  ※2022.1.13 追記

  踊り子、サフィール踊り子、湘南は適用外となっています。

 佐々木健『JR旅客制度のQ&A311』77頁によれば、当初は往復や連続経路では認めない解釈をしていたようですが、昭和44年に新幹線で連続乗車となる事例で認めるようになったことで、運用上、解釈を改めたと思われるような記述があります。

 

 

 (3) 連続で利用する方法

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 広島から出発し京都で遊んでから鳥取に行く場合です。岡山と京都が重複乗車になっていますが、スーパーはくとを乗割にできます(智頭急行線部分は割引にならない)。

 

 

 (4) 捨てキップを使って安くする方法 

  乗割にしない方の特急券が、乗割にする特急券より安い場合は、乗らないにしても、あえて遠くまで購入すると安上がりとなります。理論より実践例を見てもらった方がわかりやすいと思います。 

 

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 上記は、岡山まで行く事例ですが、あえて新倉敷まで購入しています。右が捨てキップになります。こうすると、岡山⇒新倉敷の自由席特急券870円を余計に購入しても、サンライズ特急券が1910円引きになるので、1040円も浮いてしまうのです。サンライズ出雲・瀬戸弁当(1000円)分が浮きます

 ここで、規則に詳しい人は、乗割の場合は、乗車券を同時購入するか、提示しないといけないのでは?という疑問が湧くと思います。この場合、面白いことに東京⇒岡山と東京⇒新倉敷は同じ金額なのです。JRの場合は長距離になればなるほど運賃の上がり幅は抑えられますので、区間が長い場合はメリットが出しやすいのです。

 

 では、いらない方の特急券を払い戻したらいいのでは?というあくどい事を思いつく人がいると思いますが、券面をよく見てください。どちらも「乗継」の文字が入っていますよね。この場合は、2枚セットでないと払い戻せないのです。

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 硬券時代はこのように「乗継」のゴム印が新幹線の特急券にも押されました。
 

 ちなみに、博多南線特急券は100円なので、これを使ったらお買い得とか思うかもしれません。しかし乗継駅から博多が外れているので、できません。同様に越後湯沢もできません。

 

8 満席の場合は「乗継請求」のゴム印をおしてもらおう

 

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 先に乗る列車は購入できたが、接続する列車が満席で購入できない場合は、乗割を申告した証として乗車券に「乗継請求」のゴム印を押してもらってください。たとえば新幹線で京都から名古屋に行って、そのあと「ひだ」で高山に行く際に「ひだ」が満席の場合ですね。とりあえず新幹線の特急券を買っておいて、名古屋駅でひだの特急券が購入できるのであれば、このゴム印のおかげで半額になるということです。名古屋駅でも満席なら、乗割の自由席特急券を購入すればいいのです。 

 

 こちらが実例です。 

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 おそらく定期券で入って、上野駅の通路にいた多客対応の駅員に直江津まで乗り越しを申し出た乗車券だと思います。その際に、新幹線の自由席特急券を併せて購入したものの、長岡から直江津までの特急券を売れなかったので、「乗継請求」のゴム印をおして、長岡駅で購入するように誘導したのだと思います。簡易テーブルとパイプイスで売っている特設コーナーなので、記入式の特補をもっておらず、売れなかったのでしょう。

 

9 片方が1か月と1日後の特急券となる場合

 さらに相当マニアックな話に入っていきます。

 指定券の発売は1か月前の10時からという話をよく聞くと思います。上記のようにサンライズの場合は1か月前に購入したいですよね。でも、その先の新幹線は1か月と+1日なので、1か月前ルールだと、乗継割引として購入できなくなってしまいます

 

 ここから先がすったもんだなのですが、サンライズ特急券を今まで全勝している某旅行会社の窓口に頼んだのですが、やはり翌日の新幹線の自由席特急券とセットでは売れないという返事なのです。お気に入りのシートを確保する方が大事ですので、普通に購入して、あとで変更しようと考えました。

  で、後日、JR東日本の駅に行くと、満席でない場合はいったん席をマルスに戻すというのです。戻されてしまってはたまりません。数分であっても、苦労して手に入れた席を取られてしまうリスクがあります。マルスの操作上は、戻さずに同じ席を維持した状態で変更は可能なので、別の会社で尋ねてみようと思いました。

  そして、後日、立ち寄った名古屋駅で相談すると、そもそも乗継割引とセットで発売する自由席特急券は1か月+1日前であっても発売できるルールであるというのです。これはJR東日本が間違っていたのではなく、会社による運用ルールの違いです。しかも、名古屋駅では、当初の案内(JR東日本管轄の旅行会社)で迷惑をおかけしているので、乗変(次は変更できない。)扱いにしないというのです。JR東日本の対応をJR東海の駅員が謝ってきました。

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 もともと新幹線の自由席特急券は、2日間有効だったので、このような問題は起きませんでしたが、当日限り有効となったことで起きた問題といえます。そう考えるとJR東海の対応のほうが適切ですね。

 

 まあ、このような事態は少ないかと思いますが、都内で1か月+1日後の自由席特急券とセットで購入したい場合は、東京駅か品川駅のJR東海窓口か、新宿にあるJR東海ツアーズに行けばいいと思います