旅と鉄道の美学

鉄道を中心とした国内外の旅と切符などについて語ります。

【営業規則系】 大人の乗車券を学割乗車券に変更できるのか?

 お堅い話、一本はさみます。どうもJRの解釈が間違っているようなので指摘しておきます。

 

 先日、誤って大人の普通乗車券で購入してしまったので、後日、学割証をとってきて、学割に変更しようとしたら断られました。そこで表題のような疑問が出てきたわけです(現在、大学院にも通っています。)。昔、学部のころに一度変更したことがありますが、普通にやってくれましたので、当時と規則が変わったのか気になりましたが、特に変更もないので、解釈を変えただけなのだと思います。しかし、そのJRの解釈が間違っています。

 

  まずは駅の窓口で尋ねた際の回答から。これは一駅員の見解ではなく、社員用のタブレットに入っていたQ&Aの文面なので、JR東日本の統一見解となります。

  

「千葉~仙台市内」の乗車券(無割引)を所持しています。学割証を呈示し「東京都区内~仙台市内」(学生割引)に変更することはできますか?

 ⇒乗車変更できません。お客さまは原券の距離が割引条件を満たしていながら割引購入していないため、学割の乗車券への変更は運送契約者が変わったとみなします。乗車券類所持旅客(=運送契約当事者)の変更まではできません。割引の乗車券は購入・使用に条件があり、運送契約当事者が限定されます。したがって購入に条件の無い無割引の乗車券から変更することはできません。

 

 この誤解の根本は、運送契約者という契約主体と契約条件の取り違いから生まれているのではないでしょうか。この文面の作成者が、主体と条件を勘違いした可能性が高いですね。

 具体的に書いていきます。

 まず、乗車変更が可能な場合は規則241条にあるように「その所持する乗車券類に表示された運送条件と異なる条件の乗車を必要とする場合」とあり、運送条件の変更に限られます。

 したがって、運送契約者の変更ができないのは正しいです。これは、具体的には、大人の乗車券を小児の乗車券に変更できないという場面で現れます。たまに間違えて購入した乗車券を払い戻し手数料がもったいないとのことで、最低区間の小児の乗車券に変更しようと考える人がいますが、できないのはこれが理由です。もっとも、大人であれば他の区間の普通乗車券には変更可能なので、こうすれば持ち出し額は手数料より安くなります。

 このとき、大阪環状線の最低区間の乗車券に変更すれば130円で、特急券の場合は、ガーラ湯沢博多南の自由席特急券に変更すれば100円になると気付く人もいるでしょう。しかし、原則として、駅では自駅にかかわる乗車券類でないと発券できないので断られるでしょう。旅行会社ならできますが、さすがに整理券とってやっと呼ばれて130円では。。。

 同じ理由で、小児の乗車券を大人に変更するのも無理と考えます。

 

 まあ、乗車券は購入してすぐであれば、払い戻し手数料なくして払い戻してもらえますね。うっかり誤購入した場合などで、駅員に承認してもらえたらですが。

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 では、学割の条件を満たす主体と満たさない主体は別の運送契約者なのか?今回の場合は、どちらも私なので、同じです。JR東日本の文面からは、「原券の距離が割引条件を満たしていながら割引購入していないため」という理由をもって契約主体の変更ととらえているようです。つまり学割が使えるのに使わなかったオレと、学割を使おうとしているオレが別人格だと考えるのですが、これは営業規則の体系からもおかしな話になります。たとえば、学生割引は92条、93条に被救護者割引(いわゆる介割)、94条に往復割引が記載されていて、片道から割引の利く往復への変更はできるのですから、現場での取り扱い自体も矛盾しています。やはり、学割への変更は主体の変更ではなく、契約条件の変更と見るべきといえるでしょう。

 JR東日本のように、契約主体の人格の中に条件を付けくわえて読み込むことは論理的にできないわけではないですが、体系的にみて無理があるので統一感がありません。国鉄時代から連綿と続く一貫した解釈を規則の変更なく、無理な見解を旅客に押し付けるのは消費者契約の面からは望ましくないですね。

 さらに、JRは学割から大人への変更は認めているので、論理的にも矛盾します。

 

 文献を調べてみました。

 まず国鉄からJRまで勤めた佐々木健氏の『JR旅客制度のQ&A311』(中央書院、1990)123頁をみると、学割乗車券から学割を満たさない乗車券に変更する場合に、変更可能としたうえで、学割証は返還しないという回答とともに、「無割引のものから割引のものへの変更は割引証なりそれに代る証票が必要です。」と述べています。普通乗車券から学割乗車券への変更を可とする前提です。

 この内容は、そのお弟子さんである小布施由武氏の『JR旅客営業制度のQ&A』(自由国民社、第2版、2017)179頁に引き継がれています。

 

 ※以上の話は旅行開始前です。開始(改札を入ったとき)してしまったら無割引になります。

 

 なお、ためしにJR東海のお客様センターに同じ質問をしたところ、「割引きっぷの変更はできないので、いったん払い戻しとなります」との答えが返ってきました。JR東日本よりレベルの低い答えで恐れ入りました。言っていることは正しいのですが、それは企画乗車券を他に変更する場合や企画乗車券に変更したい場合の話なので、学割と一緒にしてはまずいですね。