旅と鉄道の美学

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【営業規則系】 鉄道の営業規則通になるための手引き (営業規則は無形文化遺産といえる)

  営業規則通になるためには

 

 鉄ヲタの中で一番人口が少ないと思われる営業規則マニアになるための講座です。

 まずは下のような時刻表のピンクのページを熟読することから始めます。

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 これをマスターすれば、自力で運賃や料金の算出、切符の組み合わせなどができるでしょう。国内旅行業務取扱管理者試験もこのページの半分程度の内容で十分です。会社の総務担当者なら非常に重宝されます。良くわからない場合は、解説本などが出ているので併せて読むとよいでしょう。

 

 最初は、601キロ以上の往復割引や、新幹線と特急の乗継で特急券が半額になる制度、途中下車の活用、払い戻しより変更の方が安くつくこと、各種のフリー切符などのテクニックを活用してちょっとずつ費用を浮かしていきましょう。

 もうすこし上級テクとして、区間変更や、災害時の払い戻し、2時間以上遅延による特急券の払い戻し、連続乗車券による各種テクニックなど頭に入れておくと助かります。 

 

 次は、三種の神器である営業規則・単行規程集・連絡運輸規程に入っていきますが、最初は『旅客営業規則』で十分です。いまはJRの各サイトにアップされているので、それを用いるとよいでしょう。ちなみに三種の神器は私が勝手にセレクトして言っていることです。

 なお、「旅客営業取扱基準規程」というのは営業規則に基づいて実際に事務の取り扱いをする場合のルールがかかれているもので、規則ではありませんが、解釈の助けになります。法律に対して施行規則にあたるようなものですね。

 

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旅客営業規則:
 法的には約款に相当します。詳しくは下記をご覧ください。

 旅客営業取扱基準規程:
 法律に対する施行規則のようなもので、事務的な取り扱い方法が書かれています。

 左頁が営業規則で、右頁がそれに対応する取扱基準規程となっています。

 

 こんな感じで切符の様式も載っているので、ヴィジュアル的にも楽しめますが、現在は実際に発行されていない様式ばかりです。たまに夏休みなどの多客期に臨時でこの手のキップを売っていて懐かしく思うことがあります。もちろん携帯できる乗車券発行器でも出せるのですが、同じものが大量に出る場合は手売りの方が早いですからね。

 なお、ネット上の営業規則では様式は省かれているので、図書館などに入ってる書籍で確認すると良いでしょう。

 

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旅客関係単行規程集:

 関連する雑法が集めてあります。JR六法とでも言えましょうか。昔は周遊券の規則を確認するためによく使用しました。

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旅客連絡運輸規則別表・旅客連絡運輸取扱基準規定別表:

 連絡運輸(JRとそれ以外の連携)を行える区間や内容を具体的に規律しています。連絡運輸の乗車券を収集する方には役立つ本です。普通に旅行するだけならいりません。現在は大幅に変わっているので、関連サイトを見るか、駅で見せてもらった方がいいです。

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 ここまでが市販されている物ですが、企画乗車券などを調べるには不十分なので、鉄道会社の部品即売会や趣味系のショップなどをこまめにチェックして、通達集や旅行会社向けのタリフなどを手に入れることになります。ただ、運転(運転規則・配線図類)や機械関連(機関車の取説)などと違って人気がないので、あまり売られてないのが実態です。

 

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 企画乗車券などの規程集です。本来は、こういった規則もネット上に上がってなければ消費者取引契約としてはおかしいのですが、たぶん面倒なのでアップしていないのだと思います。もちろん駅にいけば見せてくれますよ。改正民法が施行されたあとは、改正法の趣旨に沿って徐々にネットに上がってくると思います。

 

 

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 こちらは京王電鉄東京都交通局の規則です。こういったものは絶対数がすくないので、趣味系のショップや古本屋でも出ることはまれです。

 

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 これは中学生の時に時刻表の情報では不十分だったので、思い切って購入した最初の営業規則です。地元の図書館などには入っていませんので、買うしかないのです。文学好きの子が文学全集を買ったり、動物や植物が好きな子が図鑑を買ったりする感覚ですね。ただ、中学生の学力ではさすがに読みこなせませんでした。要するに法律文なので、独特の感覚がないと読解できないのです。大人でも慣れないと難しいと思います。

 その後、高校生になってなんとか表層だけは理解できるようになってきたものの、最終的に完璧に理解できたのは法学部にはいってからです。逆に言うと、営業規則を読んでいた延長で法律的なものの面白さを感じていたので、法学部に行ったのですが。

 ちなみに某私鉄で駅員のバイトをしていたのですが、仕事の休憩時間にその鉄道会社の営業規則を読書していたので、随分と不思議がられました。他のバイト君はごみ箱からジャンプやマガジンを拾ってきてこっそり読んでいました。私の場合は時刻表か営業規則なので、改札で読んでいても、誰も咎める人はいませんでした。

 

  営業規則は無形文化遺産であるといえる

 

 ということで、営業規則を読みこなすには骨が折れるかもしれませんが、日本の鉄道の奥深さを知ることができます。これだけ複雑でありながら合理的な鉄道の規則をもっている国はないと思います。JRの分岐点通過に関する区間外乗車(※)などは感動すらおぼえます(理論的な芸術性というか。。。機械工学の人が機械の仕組みで感動したり、電子工学の人が配線図を見て感動するようなものです。)。その根本には、海外では一般的である列車ごとに乗車券を発売するような制度をとってないことがすべての発端でしょう。そのうえ、昔はフェリー(連絡船)やバス、更には国鉄以外の連絡乗車券まで発売しまくっていたので、更に複雑怪奇にしていたと思います。

 わたしは、これを一つの無形文化財と思っています。ユネスコへの登録申請をしてもいいと思いますが、登録されたら、「日本人はクレイジーだ」と言われると思います。

 

 しかし、なぜこのような形になったかと考えると、国鉄時代まで長く続いた公務員として公僕の意識があったのではないかと思います国鉄時代には、今では考えられないような複雑な制度や複雑な運転をする列車が多数ありました。大阪の車掌が青森まで乗務するような運用もそうですね(トワイライトと日本海の廃止まで残った。)。乗客へのサービスを考えてです。これは国民のためにという意識でなされていたといます。さらに、有能な官僚と生真面目な日本人気質があいまって複雑な制度も整然と運用されて100年近い歴史をもってきたのでしょう。

  それもJRになって、企業的な合理性の下に制度が改変されてきています。これは乗客にとってわかりやすい面もあるので、悪いことだとは思いません。しかし、便利であった制度がJR側の都合だけでなくなってきたことはさびしいところです。特に全国一律であった運賃が、本州以外が別金額となったのは、分割民営化時の方針を知っている方には納得がいかないと思います。

 

 ※たとえば東京から新幹線で名古屋に着いて、中央線に乗り換えて多治見に行く場合は、名古屋と金山の間が重複乗車になってしまいますが(新幹線と東海道本線を同じとみなすルールがある。)、名古屋で下車しなければ(改札を出なければ)追加運賃は不要という制度です。

 

  現代文の勉強にもおすすめ

 

 なお、鉄道ヲタの中高生は、営業規則に触れておくと、論理的思考力が養われて、受験に役立ちますよ(苦w)。私の場合は意図せずに趣味に実益がともなっていました。駅員のバイトをしたときの精算関連の研修は余裕でした。

  最近は中高生の読解力が問題となっていますが、私が尋ねられたら、時刻表と営業規則を読んで実践することを薦めちゃいますw。