旅と鉄道の美学

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【コラム】 国鉄車掌の白い制服についての思い出

 小学生の時は列車や駅の写真ばかりをとっていましたが、もっと鉄道職員の仕事ぶりをとっておけばと悔やんでおります。これは数少ない風景で、お気に入りの写真の一つです。

  山陰本線豊岡駅で、特急まつかぜが発車する直前の駅長と車掌長です。白い制服の二人がちょうど収まったので、とったのだと思います。奥には専務車掌(乗客専務という腕章をつけている)もいますね。夏休みですが、いまのような猛暑ではなく、からっとした晴天で、昼ののどかな感じが思い出されます。国鉄時代の白制服は夏の風物詩の一つでした。

 

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 さて、最近の優等列車の車掌は、北海道と東日本(新幹線のみ)をのぞいて白服を着ることはなくなってきたと思います。JR東海がやめてしまったのが残念ですが、健康管理の方が大事ですからしかたがないです。

 国鉄時代は、急行以上の車掌は他の列車とはちがう制服でした。冬はダブル、夏は白の盛夏服といわれるもので、特に夏の白は目立ちました。生地は麻です。昭和40年代はエアコンなしの急行もあったので、上着はきつかったでしょうね。

 

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 これは、映画「皇帝のいない八月」に登場する寝台特急さくらの車掌ですが、非常に忠実に再現されています。特に胸についている特別司法警察職員章まであるのは、この手の映画ではめずらしいです。腕章にCONDUCTORが入っていませんが、時代背景からして正しいです。英語が入ったのは昭和50年代中盤ぐらいのはずですので。

 

 さらにネクタイですが、昭和40年代は下のような蝶ネクタイも多かったようです。出雲市にある旧大社駅の資料室にありました。

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 私自身は、唯一、昭和60年ぐらいに1回だけ蝶ネクタイの車掌をリアルで見たことがあります。

 

 

 

 

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  さて、民鉄では、東武小田急箱根登山鉄道ロマンスカーの車掌が白ですね。小田急の方は上着だけ白なので、国鉄時代の車掌補みたいです。上下白にしてほしかったです。名鉄の特急車掌も白だった気がしますが、もうなくなったようですね。

 

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 新幹線(JR東日本)の車掌

 

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 東武特急の車掌

 

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 小田急特急の車掌 

trafficnews.jp

 

 

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 JR北海道優等列車の車掌(田中和夫著『車掌の仕事』表紙より)

  

車掌の仕事

車掌の仕事

 

 

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 こちらは一昔前のJR北海道の白制服です。国鉄の色に近いですね。

 

www.estoppel.jp

 

 

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 これは急行「たかやま」に乗ってきて、大阪駅に着いたときにです(1999年5月)。写真に助役さんが写っていますが、この時期のJR西日本の夏服は全員が白でした。優等列車の車掌は、この助役のように上着を着ていたと思います。

 

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 こちらは25年近く前の大井川鐵道です。右に写っている「乗客専務」の腕章を着けているのは車掌さんで、白服勤務でした。この方は観光客を相手にする観光車掌で、他に通常の制服を着ている本務の運転兼掌の車掌(運転業務取扱兼務の車掌)がいました。現在は白服勤務ではないようです。

 

 JR九州の「ななつ星」の乗務員は白服ですね。ただ、クルーズ船のような制服なので、ちょっと私の好きなイメージとは違います。

www.cruisetrain-sevenstars.jp

 

 

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 参考に国鉄の制服の構造を解説しておきます。

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 JNR(国鉄)表記です。これで本物かどうか判断します。

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 ボタンは動輪です。

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 学ランのように止めてあります。

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 裏地はありません。

 

 さて、そのような車掌の制服をみて、カッコええな~って思って、将来は寝台特急の車掌長を目指そうとしていたのですが、JRになって募集自体がなくなってしまいました。正確には、現場職は高卒と短大卒で、大卒は総合職の募集だけで、しかも超人気企業なので狭き門でした。結局、冷やかしに会社説明会だけ行って受けませんでした。 国鉄が残っていたら、採用試験を確実に受けていましたね。

 そうです。根性だけは、どの世代にも負ける気がしない就職氷河期世代です。 

 ここ最近は、鉄道各社の中途採用も増えているので、第3セクターにでも入社したら、JRからの直通特急の車掌もできるかもしれませんが、この歳で初任給にちかいスタートはきついのでやめておきます。でも、定年を過ぎたら、田舎の駅の駅員のパートはやりたいですね。私なら喜んで最長片道切符でも何でも作りますので、日本で一番マニアに親切な駅員になれる自信があります。あるいは人不足でパートの車掌などもありえそうですね。

 

 臨時急行「だいせん53号」に乗車したときは、米子車掌区の車掌長さんが帽子を貸してくれ、写真を撮ってくれました。ズボンと靴が白なのでいい感じの写真になっています。ちなみに真夜中の3時ぐらいですが、元気な顔をしています。この当時は夜行を中心に旅行を組んでいて、夜中も昼なみ動き回っていたのですが、テンションが高かったのであまり眠くありませんでした。もちろん家に帰ったら泥睡眠ですがね。

 

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 この写真、よく見たらトイレの前ですね。しかも垂れ流しです。右足の少し横に見えているタテの筒状のものが線路に流す管ですね。

 

 

 さらに、帽子がどうなっているか気になるところですが、構造は交通課の警察官と同じで、カバーをかけるタイプです。JR東海のものは、国鉄と違い帽子全体がそもそも白でした。

 

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 さらに、靴も気になると思いますが、白!です。ただ、JR北海道などは靴は自前のようで、白をはいている人は少なくなっているようです。

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 熱海駅修善寺行きを解放した直後で、伊豆急下田に行く特急踊り子の発車を待つ専務車掌氏です。車両が切れているので、車掌を入れて写したのだと思います。右手のタバコがいかにも国鉄ですね。今ならそのまま炎上しそうな写真です。

 

 JRになって皆さんキビキビとした姿を目にするのですが、個人的には国鉄時代のだらだらした雰囲気の方が好きでした。