むかしタイの夜行列車に乗った時に乗車率5%ぐらいで3列シート(多くは2列・3列の組み合わせになっている車両)で思いっきり熟睡し、夜中に起きたら乗車率110%ぐらいになっていて、恥ずかしい思いをした記憶があります。知らないうちに途中駅からの乗客が増えていたのです。タイの人って起こさないものなんですね。完全に傍若無人な日本人状態で寝ていました。
さて、そこで思い出したのは、20年近く研究している夜行列車における座席での最適な体勢です。いつもの通りしょーもない企画ですが、わりと真剣です。
【ロングシート編】
ロングシートの夜行列車自体があり得るのかという話ですが、かつて山岳夜行といわれた新宿⇒上諏訪(むかしは松本行)がそうですね。通勤用の115系で運用されていたので、ロングシートが存在しました。わたくしは八王子で乗ったので、ドア横の2人掛けシートで寝る羽目になりました。
【ボックスシート編】
下の写真のように向かい合わせのシートに垂直に座るしかない座席です。典型的な事例は、かつて大垣夜行といわれた東京⇔大垣間の夜行列車ですね。国鉄時代は普通のみならず、夜行急行列車もボックスシートばかりでした。
そのような中、一部のマニアの間では寝方について研究が静かになされていたようです。占有面積に分けて類型化します。
夏休みなのにガラ空きだった 天王寺⇒新宮 快速「きのくに」
この一世代前には、指定席車が連結されている快速「いそつり」があり、いきがって指定券を購入したものの、こちらもガラガラでした。
ボックスシートを横から見るとこんな感じです。
空いている場合の標準的な使い方はこうです。
●ボックスシート(1席利用)
一人一席でどうするかです。窓側であれば、頭を壁に支えてもらう形で寝るのがベストですね。ネックエアーピローがあれば万全です。
では、通路側はどうするのか。もう、猫背気味に座った地蔵スタイルしかありません。イメージとしては酔いつぶれて駅の階段にへたり込んだ酔っ払いと同じです。上の写真のように手すりの部分に突起があり、頭が支えられたらかろうじて窓側とおなじ方法をとることは可能かもしれません。
●ボックスシート(2席利用)
冬の北海道や閑散期の自由席でありがちなパターンです。一番可能性が高いと思います。基本姿勢は、くの字を描くように眠り、ときどき座って節々の痛さを和らげるしかありません。
問題は頭を窓側か通路側のどちらに置くかですが、私は窓側派です。通路側などは大きな荷物をもった人に当てられるリスクがありますからね。
そして、頭は肘掛の上に乗せたいのですが、高さがまったく合わないのです。その場合の方法として片方の座席の下に空き缶を入れるという裏技がありましたが、外れたときにとんでもなく大きな音が鳴りますので、適切ではありません。むかしはお茶が入っている土瓶を2個入れるといい感じの傾斜になったらしいです。
私のよくとった手段は下図のように時刻表とカバンを活用する方法です。余裕があれば、時刻表部分に着替えを挟むことでソフトになります。
ちなみにこういった迷惑な方法もときどき目にしました。
これは映画「砂の器」で今西刑事(丹波哲郎)が乗客に注意しているところですが、肘掛けに足をせています。確かにこのスタイルか、肘掛けの下に足を投げ出したら、かなり水平に近いポジションをとれますが、通路を通る人には相当な迷惑となります。
●ボックスシート(4席利用)
マイナーな列車や、急に設定された臨時列車などは空いていることがあり、4席全部を利用できる王様スタイルです。 しかし、贅沢に4席利用できる割には、達成感はあまりありません。下図のように一番支えがほしい尻部分が座席からずり落ち気味になり、結局2席占有と大差はない体勢に戻ってしまいます。
これを回避する手段は座席の間に荷物を置く方法です。いまならスーツケースをよこにすれば、たいがい座席と同じ高さなので、水平に近い状況を作り出せると思います。しかし、JRになってからは、そもそも夜行列車がほとんどないうえ、効率的な運用をしているので、一晩で4席独占できる状況に出会うことは極めてまれでしょう。1998年ぐらいまでの急行の夜行列車ならまだまだ4席利用はできた記憶があります。
ボックスシート編の最後は、かつてとんでもない方法を現認したので、挙げておきます。これは評価できるようなものではないですが、理論的には画期的です。
オール座席車で構成された大阪⇒出雲市の臨時急行だいせんで一部のマニアが実施していたものです。大胆やな~って思いつつ、これはいかんでしょ!っとも思い、真面目な私は真似しませんでした。繁忙期に定期のだいせんのすぐ後を追っていく救済列車です。
上図のように、座席自体を取り外して床に並べて、その上に寝るというものです。床に敷いたマットレスと同じ役割です。多少、くの字になりますが、尻の部分が落ちないので、かなりの安定感がありますし、寝返りもしやすいと思います。しかし、マナー違反を超えて、違法性のある行為と思料します。
その後、20回以上座席の夜行に乗っていますが、この形態を見ることはありませんでした。
【リクライニングシート編】
下のようなリクライニングの場合です。
●リクライニングシート(1席利用)
基本的にボックスと同じですが、注意点があります。改造車で窓枠とのピッチがあっていない場合は乗車時に念入りに選ばないと、頭の支えとなる壁がベストなポジションに来ないことがあります。
●リクライニングシート(2席もしくは3席利用)
これは一つ裏技があります。下図のように自分のシートと隣のシートの角度に差をつけて、頭をそのエッジにひっかけるのです。こうすることで頭が安定し、睡眠を助けてくれます。
●リクライニングシート(4席利用)
こちらもボックスシート4席利用と似たようなものですが、車両によって一つだけ裏技があります。下の写真のような国鉄時代のグリーン車です。
このシートは背もたれを倒すと、座面が前にでるので、シート間のピッチが縮まるのです。そうすると、上記の尻がずり落ちるリスクが軽減されたうえ、背もたれがかなりの角度まで倒れるので、体を斜めにして水平に近い状態が作り出せるのです。サロ165系(大垣夜行のグリーン車)で実験済みです。すごく寝心地がよかったです。これにスーツケースで支えができたら寝台に近い状況を作れると思いますが、もうどこにも走ってないです。
●そもそも座席にすわらない方法
リクライニングの場合の究極の方法が、下記のようにスーツケースなどが置かれることが多い壁と最後の座席の間(○部分)に新聞を敷いて横になる方法です。若干足を通路に投げ出して、蹴られるリスクを甘受し、みすぼらしさが気にならなければ、ほぼ水平になれるので、最高の体勢です。ただ、1車両に2か所なので競争率は自然と高くなります。あとは最後の座席の人に嫌がられる場合もあります。他に空席があるのに、あえてここに寝るのはマナー違反といえるでしょう。
最後に私の一番最悪の状況をお話します。それは高校2年のとき、青春18きっぷを使って九州にむかっているなかで、最初の夜行である京都⇒熊本のムーンライト九州に乗ったときです。途中駅だったので、乗車率が既に150%近い状況になっており、まさにお盆の新幹線以上の状況だったのです。最盛期の大垣夜行よりひどかったと思います。列車に足を踏み入れても、1歩しか入らないのです。本当に一歩です。どうしようもなく立っていたのですが、さすがに座りたいので、近所の人にスペースを作ってもらい、体育座りで寝ました。そのまま5時間ぐらい同じ体勢だったと思います。あれは人生で一番最悪な夜行列車でしたね。最盛期の大垣夜行よりひどかったです。かろうじて救いなのは、隣が親切な人で、新聞紙を分けてくれたことです。
いい感じの動画を見かけたので、リンクさせてもらいます。
これの1.1倍ぐらいの混雑でした。
ということですが、夜行列車のほとんどない現在ではこの研究はあまり価値をもちませんね。
★注意点★
以前のムーンライトながらのテーブル付の席(コンパートメント)はリクライニング機能がありません。ただし、テーブルに突っ伏して寝るという方法があります。下記の指定券のとおり1度だけ利用して、しかも4席独占でしたが、快適とはいえませんでした。
こんな感じになっています。現在も、飯田線と身延線の特急に存在します。