旅と鉄道の美学

鉄道を中心とした国内外の旅と切符などについて語ります。

【営業規則系】 民法改正と営業規則について(愚痴あり)

ちょっとアカデミックなネタに入ります。

営業規則マニアだけ進んでいただければ結構です。

 

再来年4月から施行が予定されている改正民法について創設される定型約款の規定について運送契約との関係を見てみましょう。

まず条文を見てください。太字だけ読むと読みやすいです。

 

(定型約款の合意)
第548条の2  定型取引(ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって、その内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なものをいう。以下同じ。)を行うことの合意(次条において「定型取引合意」という。)をした者は、次に掲げる場合には、定型約款(定型取引において、契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された条項の総体をいう。以下同じ。)の個別の条項についても合意をしたものとみなす。
一 定型約款を契約の内容とする旨の合意をしたとき。
定型約款を準備した者(以下「定型約款準備者」という。)があらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していたとき。
2 前項の規定にかかわらず、同項の条項のうち、相手方の権利を制限し、又は相手方の義務を加重する条項であって、その定型取引の態様及びその実情並びに取引上の社会通念に照らして第一条第二項に規定する基本原則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるものについては、合意をしなかったものとみなす。

 

 これを、鉄道を前提に噛み砕くと、定型約款である規則を旅客に表示していた鉄道会社と運送契約の合意をした場合は、その規則に合意したとみなすということなのです

 ルー大柴流に噛み砕くと、ルールをオープンにしているレールウェイカンパニーをつかってムーブしようとおもっているパッセンジャーはチケットをバイしたときにルールをアクセプトしたことになるんだぜ!ということなのです。

 

 

① まず定型約款に該当する営業規則の「表示」の点です。

表示ということであれば、ホテルの机の引き出しにある約款が代表的だと思いますね。では、JRの場合はどうか。 一部の乗車券の裏にはこのような表記がありますが、十分ではありません。1行目の文言は国鉄時代から駅の出札付近にでていた看板と同じ内容です。

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 約款として営業規則の抜粋が出札においてある事例(JR西日本

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 国鉄時代の掲示福島県喜多方市・日中線記念館にて)

 

 

 IT時代の現在では、あまり読む人はいないかもしれませんが、下記のようにしっかりサイトに掲出されています。

しかし、これを表示というのでしょうか。

そのあたりはしっかりしています。鉄道営業法に下記の条文が加わります。

第十八条ノ二の一条
鉄道ニ依ル旅客ノ運送ニ係ル取引ニ関スル民法(明治二十九年法律第八十九号)第五百四十八条の二第一項ノ規定ノ適用ニ付テハ同項第二号中「表示していた」トアルハ 「表示し、又は公表していた」トス」

 

 「公表」で良いとする条文なのです。これならサイト上に上がっていれば、疑義を持たずにすみますね。実際、現実的にあれだけ大量の条文を表示するなどは難しいですし、改変の際の事務作業も膨大ですからね。

 

 さて、このような形で本格的に営業規則の表示がなされるということは、鉄的に何を期待するかというと、フリー切符などの企画乗車券の規則類も充実するのではないかということです。現状は乗車券類だけですが、特殊な切符の規則も公開されるようになると、我々としては研究し甲斐がありますね。

 

 ② 次に「運送契約の合意」です。

学問チックに考えると、券売機は申込みの誘引といえますね。「きっぷはいらんかね~」という無言のお誘いです。 

で、皆さんはつられて、ボタンを押す。これ申し込みです。

切符が登場したら運送契約成立ですね。乗る権利が与えられたということです。

これが運送契約の合意です。 

 

イカの場合はタッチしたところで運送契約が成立しますが、下車駅が決まってませんから下車駅が不確定な運送契約といえます。そして、下車駅でタッチしたところで契約条件の追完がなされるという形でしょう。

 

 ③ そして「その規則に合意したとみなす」です。

 「みなす」というのは、端的にいえば反論の余地なしです。つまり規則に合意したことが擬制されるのです。②の行為をしたときに営業規則に合意したと擬制されてしまうのです。

  というような実務上の運用にお墨付きを与えるというのが今回の民法改正の趣旨のようですね。

 

 

さて、最後に、JRほか運輸機関に申し上げたいのが、旅客の権利義務に関わるような内容を安易に社内通達に委ねないでほしいということです。私も法務系の仕事をやっていたことがあるので、その方が楽なのはわかりますが、特殊な切符の利用規則の細部が通達に書かれていることがたまにあり、駅で見させてもらうとすると、通達だから見せられないという話になります。これは商談で言えば契約書案をすべて見せずに契約しろと言っているようなものでナンセンスです。

とまあ、9割がた鉄ヲタの愚痴ですが、JRの法務の方、見ていたらご検討を。

タリフぐらいは見せてくださいよ。

 

 

なお、営業規則は書籍でもでています。 

東日本旅客鉄道株式会社旅客営業規則・旅客営業取扱基準規程

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